自己不活性化タイプのRetro-X Q Vectorは高いウイルス力価と確実な発現レベルを実現し、プロモーターの干渉の可能性を少なく するように設計されている(1)。
Q Vector(pQCXI*)は目的遺伝子とともにIRESを介して薬剤耐性遺伝子を発現し(図1)、宿主ゲノムに組み込まれた後で5’LTRに存在するプロモーターを不活性化するように設計されている(図2)。自己不活性化ベクターではプロモーターが干渉し合う可能性が低いため、高い発現が得られる(2~5)。MMLV LTRからは効率の良い転写が起こらない細胞でも確実な発現を示す(6)。
目的タンパク質のN末あるいはC末に蛍光タンパク質を融合して発現するタイプの自己不活性化ベクター(pRetroQ-)も用意している。
図1. Retro-X Q Vectorのマップ
CMV IEプロモーターのすぐ下流に存在するマルチクローニングサイト(MCS)とそれに続く真核生物IRESによって、MCSにクローニングした遺伝子と共に第2のORF(抗生物質耐性マーカーやpQCXIXでは他の遺伝子)が確実に転写される。発現カセットはレトロウイルスの組み込みと発現に必要な要素をすべて備えている。 高いウイルス力価を実現する自己不活性化ベクター
5’LTRに存在するCMV/MSVハイブリッドプロモーターにより、パッケージング段階で高いウイルス力価が得られる。次に宿主ゲノムに組み込まれる際に、3’LTRに存在するU3領域の欠失が5’LTRに複製されるため、5’LTRのプロモーターが不活性化される。その結果、MCSのすぐ上流に位置するCMV IEプロモーターのみから転写が起こる。Retro-X Q Vector Setには、選択用薬剤耐性マーカーの異なる3種類のベクター(Hyg、Puro、Neo)が含まれている。耐性マーカーはIRES(internal ribosome entry site)を介して目的遺伝子と共にバイシストロン性転写産物として発現される。本セットにはコントロール用の
LacZ発現ベクター(pQCLIN)も含まれている。
図2. Retro-X Q Vectorの自己不活性化メカニズム
発現カセットのプラス鎖ウイルスRNA(青色)が逆転写される。組み込み時に環状中間体を形成することにより、3’LTRに存在するU3領域の欠失が複製される。これにより5’LTRのCMV/MSVハイブリッドプロモーターが不活性化され、内部プロモーターPCMV IEのみから転写が起こる(図1)。 Retro-X 蛍光タンパク質融合発現ベクター
単量体蛍光タンパク質DsRed-Monomer、AcGFP1またはmCherryをレポーターとして、目的タンパク質のN末あるいはC末に融合発現するレトロウイルスベクターも用意している。これらのベクターのバックボーンもQベクターシリーズに由来しており、高いウイルス力価と確実な発現レベルを実現する自己不活性化タイプである。宿主ゲノムに組み込まれた後は、CMVプロモーターにより蛍光融合タンパク質が高レベルで発現し、PGKプロモーターにより感染陽性細胞の選択のためのピューロマイシン選択マーカーが発現する。(図3)
図3. Retro-X Living Colors Fusion Vectors
Retro-X 蛍光タンパク質融合発現ベクターはトランスフェクションおよび感染のマーカーとして使用でき、フローサイトメトリーや蛍光顕微鏡などのマルチカラーアプリケーションにも適している(図4)。
図4. Retro-X Living Colors Fusion Vectorsの組み合わせは二重安定細胞株の作製に理想的
pRetroQ-DsRed-Monomer-GolgiとpRetroQ-AcGFP1-TubulinのコンストラクトをそれぞれGP2-293細胞にトランスフェクトし、48時間後にVSV-Gエンベロープ型ウイルスを回収した。これらのウイルスストックを用いて、HeLa細胞を同時感染させ、その48時間後に蛍光顕微鏡により感染を可視化した。 内容
Retro-X Q Vector Set
(製品コード 631516)
・pQCXIH Retroviral Vector
・pQCXIN Retroviral Vector
・pQCXIP Retroviral Vector
・pQCLIN Retroviral Vector
・5’pQC Seq/PCR Primer
・3’pQC Seq/PCR Primer
保存
-20℃