GlycoTAG™を用いたウシFetuinの糖鎖分析

Fetuinはウシ胎仔血清中の主要な糖タンパク質で、分子量48,000のα-グロブリンである。SerまたはThrにO-グリコシド結合している糖鎖3本と、AsnにN-グリコシド結合している糖鎖3本の計6本の糖鎖を1分子中に含む。N-グリコシド結合型糖鎖は、古くは1960年代にSpiroによって研究されて以来1)、種々のグループによりその糖鎖構造の研究がなされてきた。シアル酸の結合した状態での糖鎖の分析は、1988年にGreenらによって1H-NMRを用いた報告2)と1989年にTownsendらによってHPAE-PAD法による報告3)がある。例えば文献2によるとFetuinは2本鎖および3本鎖糖鎖を含み、シアル酸はα-2,3結合とα-2,6結合で1~4個結合しており、全部で23種類の糖鎖が示されている(図1)。

図1 Fetuin由来N結合型糖鎖の構造と各糖鎖の割合(%)(文献2)より

1. ウシFetuinからのヒドラジン分解による糖鎖の切出し

Fetuin 240 μg(5 nmol相当)をガラスチューブに入れ凍結乾燥し、無水ヒドラジン100 μlを加えて減圧下で封管し、100℃、10時間加熱した。開管後トルエンを加え、減圧濃縮する操作を数回繰り返しヒドラジンを共沸留去した。残渣に用時調製した飽和NaHCO3水溶液を100 μl加えて溶かし、その液が弱塩基性(約pH8.5)になっていることをpH試験紙で確かめた後、無水酢酸を10 μl加え撹拌した。15分間室温に放置した後、さらに飽和NaHCO3水溶液100 μlと無水酢酸10 μlを加え、30分間室温に放置してN-アセチル化を行った。反応後、pH3付近になるまでイオン交換樹脂アンバーライト120(H+型)を加え、37℃、1時間放置した。樹脂をその5倍量以上の水で洗浄し、ろ液と洗浄液を合わせ濃縮乾固した。

2. 切り出された糖鎖のGlycoTAGによるピリジルアミノ化(PA化)

操作手順1で得られたサンプルに水を加えて溶解し、そのうち1 nmol相当分をGlycoTAG専用バイアルに入れて凍結乾燥を行った。そのバイアルをGlycoTAGにセットし、PA化を行った。

3. PA化糖鎖の分析

GlycoTAGによりPA化したサンプルをSialidase(Arthrobacter ureafaciens)で消化することによってシアル酸を除去し、逆相系および順相系HPLCによって分析した図を示した(図2、図3)。主要なピークはスタンダードのPA化糖鎖001~003と一致した。
また、Fetuinの全糖鎖を付いているシアル酸の個数によって分析した図を示した(図4)。シアル酸が0~4個結合している画分を図4のように分取し、逆相系HPLCによって分析した(図a~e)。さらに各画分をSialidase消化し、逆相系(図f~j)と順相系(図k~o)のカラムを用いてHPLC分析した。その結果asialo画分には001、002が、monosialo画分にはシアル酸が1個結合した001、002、003が、disialo画分にはシアル酸が2個結合した001、002、003が、trisialo画分にはシアル酸が3個結合した002、003が、tetrasialo画分にはシアル酸が4個結合した003が含まれていることがわかった。なお、HPLCより求めた各画分の割合を表1に示す。
図4で分取した各画分の糖鎖に結合しているシアル酸の個数を出すため、以下のようにして実験を行った。
1)5.7 N HCl中、減圧下で100℃、16時間加熱することで酸加水分解を行い、N-アセチル化後、還元末端のPA-GlcNAc量をHPLCによって定量する4)
2)0.05 N HCl中、80℃、1時間加熱してシアル酸を遊離させ、DMB法5)でシアル酸量を定量する。
3)2)の値と1)の値を比較することによって還元末端当たりの結合シアル酸の個数を計算する。
以上のようにして計算したところasialo画分の糖鎖当たりの結合シアル酸の個数は0.16個、mono-sialo画分は0.98個、disialo画分は1.86個、trisialo画分は2.86個、tetrasialo画分は4.26個となった。

PA化糖鎖の分析パターン

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逆相系HPLC条件(図2、図a~j) 順相系HPLC条件(図3、図k~o) イオン交換HPLC条件(図4)
Column: PALPAK Type R-MB(2.1 mmΦ×150 mm)
Solvent
A:
20 mM sodium phosphate(pH4.0)
Solvent
B:
Solvent A containing 1% 1-butanol
Gradient: 0→90 min, 5→50% B
Column
Temp:
40℃
Flow
Rate:
0.5 ml/min
Detection: Fluorescence(Ex:320 nm, Em:400 nm)
Column : PALPAK Type N(4.6 mmΦ×250 mm)
Solvent
A:
200 mM acetic acid-triethylamine(pH7.3)/acetonitrile(35/65,v/v)
Solvent
B:
200 mM acetic acid-triethylamine(pH7.3)/acetonitrile(50/50,v/v)
Gradient: 0→35 min, 0→70% B
Column
Temp.:
40℃
Flow
Rate:
1 ml/min
Detection: Fluorescence(Ex:310 nm, Em:380 nm)
Column : PALPAK Type N(4.6 mmΦ×250 mm)
Solvent
A:
50 mM acetic acid-triethylamine(pH7.3)/acetonitrile(40/60,v/v)
Solvent
B:
1 M acetic acid-triethylamine(pH7.3)/acetonitrile(50/50,v/v)
Gradient: 0→110 min, 0→55% B
Column
Temp:
40℃
Flow
Rate:
1 ml/min
Detection: Fluorescence(Ex:310 nm, Em:380 nm)

表1 各画分に含まれるPA化糖鎖001~003の割合(%)
 001   002   003 
Asialo画分 35.6 64.4 N.D.
Monosialo画分 23.9 63.0 13.1
Disialo画分 13.0 60.2 26.8
Trisialo画分 N.D. 48.1 51.9
Tetrasialo画分  N.D. N.D. 100
Total 14.2 54.6 31.2
PA化糖鎖001~003の合計が100%となるように計算した。
N.D.:検出限界以下

PA-Sugar Chain 001

PA-Sugar Chain 002

PA-Sugar Chain 003

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