ProEasyは、組換えバキュロウイルス純化のためのプラークアッセイが不要でありながら、継代を繰り返したり、スケールアップしても安定なウイルスストックの状態を保持できるAcMNPV由来のlinearlized baculovirus genomic vecor DNAである。プラークアッセイを行う必要がないため、ウイルス作製に要する期間を短縮することができるので、短期間に複数の組換えバキュロウイルス作製を必要とするHTSアプリケーションに適している。プラーク精製不要な組換えウイルス作製方法としては、昆虫細胞を用いずに大腸菌内Bacmid DNAへの部位特異的トランスポジションを利用して組換えバキュロウイルスゲノムDNA調製を行う方法が知られており、時間短縮のメリットがあるが、
(1)サイズの大きい組換えBacmid DNAの精製作業に手間がかかる。
(2)作製した組換えバキュロウイルスの継代を繰り返したり、スケールアップすることで目的遺伝子の欠落が起こり易い。
という欠点があった(
Journal of General Virology, 84, 2669-2678, 2003)。これに対してProEasyの組換えウイルス作製方法は従来法通り、昆虫細胞内でAcMNPVポリへドリン部位での相同遺伝子組換えを行うが、linearlized処理(制限酵素
Bsu36 I消化)前のAcNPVゲノム上のポリへドリン部位にはβ-GAL遺伝子ではなく、致死遺伝子を挿入してあるため、たとえ未消化AcNPVゲノムの混入があったとしても、false positive recombinantの発生がない。このため、プラークアッセイによる純化操作が不要である(
関連情報参照)。これにより、ウイルス作製にかかる時間短縮が実現でき、かつ継代を繰り返したり、スケールアップしても遺伝子欠落が原因となる力価低下が起こらずに安定な状態のウイルスストックを維持できる。ProEasyバキュロウイルスDNAへの目的遺伝子の組換えには、一般的によく使われているAcMNPVポリへドリン部位相同組換え用のプラスミドトランスファーベクターが利用できる。