Retro-X Concentratorは超遠心分離を行うことなく、簡便、迅速、しかも高効率にレトロウイルス上清を濃縮できる試薬である。最大100倍にまで力価を高め、ターゲット細胞に思いどおりのMOIでウイルスを感染させることができる。
簡単な操作
Retro-X Concentratorのプロトコールは極めて簡便で、ウイルス上清とRetro-X Concentratorを混合し、一晩インキュベートした後に標準的な遠心機で遠心し、ペレットを1/10~1/100容量に再懸濁するだけである(図1)。これによりウイルス力価を10~100倍まで高めることができる。濃縮率はウイルスの外皮エンベロープにより異なる(図2、パネルB)。クロンテックのRetro-Xシステムを含むあらゆるレトロウイルス上清に用いることができ、目的に合わせた精製スケールで使用できる。
ウイルス力価を100倍以上に
Retro-X Concentratorを用いて、さまざまなエンベロープを持つレトロウイルス上清を10 mlから100 μlに濃縮した際に、それぞれの上清で元の46~116倍高いタイターが得られた(図2)。
表1. Retro-X Concentratorと超遠心による濃縮法の比較
特徴 |
Retro-X Concentrator |
超遠心 |
各容量への適応 |
可能 |
不可 |
特殊装置 |
不要 |
必要 |
簡便さ |
++++ |
+ |
超遠心操作は不要で簡単な操作、さまざまな液量や力価にも対応可能
Retro-X Concentratorは超遠心分離による濃縮に比べていくつもの利点がある(表1)。4×濃度の試薬として提供されるため、ウイルス量や力価、液量によらず、さまざまなレトロウイルス上清の濃縮に用いることができる。面倒な密度勾配サンプルの調製は不要でどんな液量、濃度のウイルスサンプルにも柔軟に対応できる。
図1. Retro-X Concentratorを用いたレトロウイルス濃縮の概要
図2.ウイルスエンベロープの種類とRetro-X Concentratorで得られた濃縮倍率
Retro-X Universal Packaging System(製品コード 631530)を用いて異なるエンベロープを発現するDsRed2マーカーウイルスを作製した。パッケージング細胞にウイルスベクターを形質転換し、72時間後にウイルスを調製した。次にRetro-X Concentratorで、各エンベロープを持つレトロウイルス(10A1、Ampho、Eco、VSV-G)を10 mlから100 μlに濃縮した(パネルA、B)。濃縮前の粗精製ウイルス、濃縮後のウイルスをHT1080、またはNIH3T3細胞に感染させ、72時間後にフローサイトメーターで陽性細胞の割合を調べてタイターを測定した。