製品説明
pRI 201 DNAシリーズは、
pRI 101シリーズ(製品コード 3262/3263)よりも更に形質転換植物における外来遺伝子の高発現を目的としたベクターである。カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーターの下流にADH(Alcohol Dehydrogenase)遺伝子由来の5’非翻訳領域(5’-UTR)(翻訳エンハンサー領域)を搭載したpRI 101シリーズの骨格
1)に加え、従来のNOS(Nopaline Synthase)遺伝子由来terminatorをHSP(Heat Shock Protein)遺伝子由来terminatorに換えることにより、pRI 101シリーズ以上に植物体での目的遺伝子産物の高発現が期待できる
2)。また、HSP terminatorの下流にあるクローニングサイト(MCS2)に他の遺伝子を含む発現カセット(プロモーター+エンハンサー+目的遺伝子+ターミネーター)を導入することにより、一つのベクターで複数の遺伝子を形質転換することが可能である。
pRI 201シリーズには、シロイヌナズナADH由来5’-UTR(AtADH 5’-UTR)を搭載したpRI 201-AN DNAとイネADH由来5’UTR(OsADH 5’-UTR)を搭載したpRI 201-ON DNAの2種類がある。シロイヌナズナ、トマト、タバコなどの双子葉植物にはpRI 201-AN DNAが、イネなどの単子葉植物にはpRI 201-ON DNAが適している。また、形質転換時のポジティブコントロールとして汎用されるGUS(β-glucuronidase)遺伝子をそれぞれのベクターに組み込んだコントロールベクター(pRI 201-AN-GUS DNA、pRI 201-ON-GUS DNA)も用意している。
本シリーズは植物形質転換用バイナリーベクター
pRI 910 DNA(製品コード 3261)をバックボーンとしたバイナリーベクターであり、
Rhizobium rhizogenesのRiプラスミド由来の変異型複製起点(Ri ori)を持っている
3)。さらにpUC系のプラスミドと同じ複製起点(ColE1 ori)を持つため、大腸菌で高コピー数のプラスミドとして維持され、また、クローニングサイトが植物の選択マーカーに対してT-DNAのRight Border(RB)側に配置されているため、目的遺伝子が欠失することなく安定に植物染色体に組込み可能になる等、pRI 910 DNAの有する特長も保持している。
※本ベクターは、国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学より技術および試料の提供を受けて、タカラバイオ(株)が製品化いたしました。
内容
pRI 201-AN DNA (製品コード 3264) 10 μg
pRI 201-ON DNA (製品コード 3265) 10 μg
pRI 201-AN-GUS DNA (製品コード 3266) 10 μg
pRI 201-ON-GUS DNA (製品コード3267) 10 μg
・濃度 | 0.5 μg/μl |
・形状 | 10 mM Tris-HCl, pH8.0
1 mM EDTA |
保存
-20℃
鎖長
pRI 201-AN DNA | 10,432 bp |
pRI 201-ON DNA | 10,475 bp |
pRI 201-AN-GUS DNA | 12,220 bp |
pRI 201-ON-GUS DNA | 12,263 bp |
pRI 201 DNAシリーズのシーケンスデータ
Fasta形式 : ホモロジー検索のデータベースや配列を扱う各種ツールに使用する際によく使われるファイル形式で、一行目の>の後ろにファイル情報(ベクター名)を入れています。
配列部分は、60塩基ごとに改行した形です。
純度
- Dideoxy 法によるシーケエンスの結果、クローニングサイトが保持されていることを確認している。
- クローニングサイトにおいてのみ1 ヵ所切断する制限酵素について、その切断を確認している。
用途
バイナリーベクター法により、
Rhizobium(
Agrobacterium)を介して植物の形質転換を行うためのベクター。シロイヌナズナ、トマト、タバコなどの双子葉植物(pRI 201-AN DNA、pRI 201-AN-GUS DNAを使用)あるいはイネなどの単子葉植物(pRI 201-ON DNA、pRI 201-ON-GUS DNAを使用)の形質転換、および外来遺伝子の高発現を実現。
使用できる代表的な
Rhizobium(
Agrobacterium)としては
Rhizobium radiobactor (
Agrobacterium tumefaciens) LBA4404があり、この菌株のエレクトロポレーション法用のコンピテントセルとして
Agrobacterium tumefaciens LBA4404 Electro-Cells(製品コード9115)がある。
pRI 201 DNAシリーズのベクターマップ
ColE1 ori : 大腸菌での複製起点(大腸菌由来)
Ri ori : Rhizobium での複製起点(
Rhizobium rhizogenes (
Agrobacterium rhizogenes) 由来)
RB, LB : 植物体に組み込まれるT-DNAのボーダー配列(
Rhizobium radiobacter(
Agrobacterium tumefaciens)由来)
NOS promoter, NOS terminator : 植物での遺伝子発現のためのプロモーター、ターミネーター(
Rhizobium radiobacter(
Agrobacterium tumefaciens)由来)
HSP terminator : 植物での遺伝子発現のためのターミネーター(
Arabidopsis thaliana由来)
GUS : β-glucuronidase 遺伝子(大腸菌由来)
NPT II : 植物での選択マーカー遺伝子(大腸菌由来)
AtADH 5’-UTR, OsADH 5’-UTR : 翻訳エンハンサー領域(
Arabidopsis thalianaまたは
Oryza sativa由来)
35S promoter : 植物での遺伝子発現のためのプロモーター(CaMV 由来)
NPT III : 大腸菌および
Rhizobium(
Agrobacterium)での選択マーカー遺伝子(カナマイシン耐性)(
Streptococcus faecalis由来)
各ベクターのクローニングサイトについては、関連情報をご覧ください。