TEMは、生物科学分野や生物学的安全性の評価、特にウイルス学分野において主要な役割を果たしています。TEMにより、ウイルス粒子、マイコプラズマやスピロプラズマ等の微生物、細胞の超微細構造が直接的に視覚化され、粒子の大きさや形態、局在(細胞内、細胞外)を明らかにすることができます。TEM試験は、日米欧各局のバイオ医薬品ガイドラインにおいて、CAL(医薬品製造のためにin vitro 細胞齢の上限まで培養された細胞)を含むセルバンク、培養上清やバルクハーベストについて実施することが推奨されています。 |
Negative Stain Electron Microscopy(NSEM)は、ウイルスの同定や特性解析のために広範囲にわたって使用されてきました。ネガティブ染色は、ワクチンやバルクハーベスト、培養上清におけるマイコプラズマ、酵母、バクテリアやウイルスのような汚染物質を検出するために特に有用な技術です。ネガティブ染色は、精製工程前のバルクハーベスト中に存在するレトロウイルス量をモニタリングする際にも使用されます。
Direct Negative Stain Electron Microscopy(D-NSEM)は、107粒子/mlより高いと予想される高力価のウイルスの場合に使用されます。 |
他の一般的な方法として、ショ糖密度勾配超遠心後に行うNSEM(SD-NSEM)と、超遠心のみの後に行うNSEM(UC-NSEM)があります。これらの方法は検出限界が最大105 粒子/ml まで改良されましたが、SD-NSEM法ではウイルスをロスすることがあり、またUC-NSEM法はウイルスと一緒に夾雑物も濃縮されてしまうといった欠点もあり、検出感度に影響を及ぼすことがあります。
これらの欠点を克服する Thin Section Transmission Electron Microscopy(TS-TEM)法は、検出限界を105 粒子/ml に維持しつつ、バルクハーベスト、培養上清の試験を、正確かつ再現性のある方法で実施することができます。この改良された方法は、バルクハーベストの試験(Reid et al. 2003; EW Milne 2003)に適用されています。加えて、細胞基材においても、マイコプラズマや原生動物のような細胞内外の混入物の存在を明らかにする事にも有用です。