出発材料と細胞基材へのレトロウイルスのコンタミネーションは、重要な問題です。ガイドラインでは、潜在的に存在しているレトロウイルス粒子が持っているであろう逆転写酵素活性を、レトロウイルスの存在を示すマーカーとするよう規定しています。これらの逆転写酵素活性試験(Amp-RT, PBRT, PERTとも呼ばれる)では、試験サンプル中にレトロウイルスが存在する場合にRNA鋳型からcDNAへの逆転写(RT)反応が起こることを検出します。これらRT依存的な試験の開発によって、哺乳類やトリ細胞由来のセルバンクやワクチンに対してPERT試験が要求されるようになりました(Lovatt et al., 1999)。PERT試験を使用したレトロウイルス試験は、無細胞培養培地で実施されます。感染性レトロウイルスは活性を持つ逆転写酵素を保有しているため、PERT試験によりそれらを検出することが可能です。
本サービスのPERT試験では、細胞由来のDNAポリメラーゼの抑制剤であるウシ胸腺DNAを含んでいるため、非常に高感度です。さらに超遠心によりレトロウイルス粒子を濃縮するので、レトロウイルスのRT活性のみを特異的に検出することができる最適な条件を備えた試験です。
レトロウイルスの感染性試験は、PERT試験と組み合わせて実施されます。例えば、細胞に化学薬品を添加して内在性や潜伏感染のレトロウイルスの再活性化を誘導した後、広範囲のレトロウイルスに感受性のある細胞を使って共培養試験または感染性試験を行い、それらに適切な検出法(例:PERTや電子顕微鏡試験)を組み合わせて、ウイルスの否定試験が実施されることがあります。
Detection of Reverse Transcriptase (RT) by Real Time Fluorescent Product Enhanced Reverse Transcriptase (FPERT) assay.
FPERT試験は、内在性レトロウイルスの活性を示さない細胞基材によって製造されたセルバンク、ワクチンシード、バルク製品などを対象に、高感度な定性試験が要求される場合に利用されます。この試験は完全にバリデートされており、結果は陰性であるか、陽性が疑われるかのどちらかとなります。陽性が疑われる結果が得られた場合は、別の試験(通常は共培養試験またはウイルス感染性試験)によって感染性レトロウイルスの有無が決定されます。