Cellartis® DEF-CS™ 500 Culture System
レンチウイルスベクターを用いたヒトiPS細胞への遺伝子導入とシングルセルクローニング
【材料と方法】
- 細胞培養
- ヒトiPS細胞株(253G1)及び、Cellartis human iPS cell line 12 (ChiPSC12)(製品コード Y00285)を、あらかじめCellartis DEF-CS 500 Culture System(製品コード Y30010)の標準プロトコールで前培養し、培地に馴らした後、実験に供した。
- レンチウイルスベクターの調製
- pLVSIN-EF1α-AcGFP1-N1 Vector(製品コード 6189)とLentiviral High Titer Packaging Mix(製品コード 6194)を製品プロトコールに従ってLenti-X 293T Cell Line(製品コード 632180)にコトランスフェクションして、培養上清中にAcGFP1発現レンチウイルスベクターを産生した。培養上清を0.45 μmフィルターで濾過して細胞屑を除いたものをウイルス液として、小分け分注後、凍結保存した。通常、107 IFU/mL以上の高力価ウイルス液を取得できる。
- レンチウイルスベクターを用いたヒトiPS細胞への遺伝子導入
- [Day 0]
あらかじめDEF-CS COAT-1でコートした12ウェルプレートに、各iPS細胞を6×104 cells/well、1 ml/well DEF-CS培地(GF-1、2、3添加)の条件で播種した。各々の細胞について2プレート準備し、一晩培養した。
[Day 1]
各ウェルに終濃度8 μg/mlとなるようにポリブレン溶液を添加後、各ウイルス液量を細胞に添加した(表1参照)。1枚の12ウェルプレートは37℃、5% CO2インキュベーターに静置し、もう1枚は遠心処理(32℃、1,200×g、60分間)した後に37℃、5% CO2インキュベーターに静置した。4時間後に新鮮なDEF-CS培地(GF-1、2添加)に全量交換し(1 ml/well)、培養を続けた。
表1. ウイルス液添加量
希釈倍率 | 1:11 | 1:33 | 1:100 | 1:300 | 1:900 | 1:2,700 |
添加量(/ml) | 90 μl | 30 μl | 10 μl | 3.3 μl | 1.1 μl | 0.37 μl |
[Day 3]
感染開始から48時間後に、再度新鮮なDEF-CS培地(GF-1、2添加)に全量交換し(1 ml/well)、培養を継続した。
[Day 4]
感染開始から72時間後の細胞を回収し、フローサイトメーターでAcGFP1発現細胞を計測した(図1)。
- シングルセルクローニング
- AcGFP1発現ユニットを染色体に1コピー持つiPS細胞株の樹立のため、以下のクローニング作業を実施した。ウイルス感染から72時間後、AcGFP1陽性率が20%以下の細胞集団を新たな培養容器に継代し、0.5 μg/ml Puromycinによる導入細胞の薬剤選択をおこなった。Puromycin耐性となった細胞集団をTrypLE Selectにてシングルセル分散した後、6ウェルプレートに100 cells/wellで播種した。GF-1、2、3を添加したDEF-CS培地を使用し、2、4、6日後に培地交換を行い、AcGFP1発現iPS株を単離した(図2. A)
【結果】
図1. レンチウイルスベクターを用いたヒトiPS細胞への遺伝子導入
レンチウイルスにより、2種のiPS細胞(A. 253G1株、B. ChiPSC12株)に高効率でAcGFP1遺伝子を導入できた。さらに遠心処理を追加することで感染効率は27倍以上向上した。
図2. ヒトiPS細胞への遺伝子導入と細胞クローニング
(A)実験概要を示す。AcGFP1陽性率が20%以下の感染条件(遠心処理無し、1:100~1:2700)で得られた細胞をPuromycinで薬剤選択することで主に1コピーが挿入された細胞集団を作製後、6ウェルプレートにウェルあたり100個の細胞を播種し、翌日から細胞観察を実施、クローン候補を選択した。
(B)選択クローンが、シングルセルから増殖していく様子を継時的に示す。
結論
Cellartis DEF-CS 500 Culture Systemを用いてシングルセル継代したiPS細胞は、レンチウイルスベクターにより高効率で遺伝子導入可能なことがわかりました。また導入細胞を希釈倍率を上げて分散することで、独立した1細胞から遺伝子導入クローンを容易に樹立することができました。
Cellartis® DEF-CS™ 500 Culture System