Guide-it™ Mutation Detection Kit
【ユーザー様実施例】:gRNAの有効性事前確認キット『Guide-it™ Complete sgRNA Screening System』の使用で、変異導入を確かなものに
理化学研究所 脳神経科学研究センター 豊島学様
理化学研究所 脳神経科学研究センター 豊島学様から、gRNAの有効性事前確認キットGuide-it Complete sgRNA Screening System(製品コード 632636)を使用した実施例をご提供していただきました。
また、豊島様に詳しいご研究内容やCRISPR/Casに関するお話をお聞かせいただき、インタビュー形式で掲載していますのでご一読ください。
<実施例>
■ 実験の背景
私の研究室では、統合失調症や発達障害の治療や予防のために、疾患メカニズムの解明を行っている。患者由来のiPS細胞から疾患モデル細胞株の樹立を目指し、そのためにゲノム編集技術(CRISPR/Cas)を使用している。
ヒトiPS細胞でターゲット遺伝子Aのノックアウトを行う際に、より有効なgRNAを選択することで本番実験での失敗リスクを軽減するために、タカラバイオのGuide-it Complete sgRNA Screening SystemでgRNAの切断効率の事前チェックを行った。切断効率のよかったgRNAをヒトiPS細胞でのゲノム編集に使った。
■ 実験内容および結果
ヒトiPS細胞のターゲット遺伝子Aのノックアウトを目的として5つのgRNAを設計し、Guide-it Complete sgRNA Screening Systemで
in vitroでの切断効率の確認を行った(図A)。その結果から切断効率のよかったgRNA 2種類(No.2と4)を選択し、ヒトiPS細胞でのノックアウト実験に供した。変異導入効率をGuide-it Mutation Detection Kit(製品コード 631448、631443)で確認したところ、いずれのgRNAを使用した場合も変異導入が見られ(図B)、シーケンスでもDeletionが起こっていることが確認できた。
<インタビュー>
♦ 豊島様のご研究内容についてお教えください。
統合失調症の病因・病態解明を行っています。具体的には発達障害仮説というものがあり、赤ちゃんが母親のお腹の中にいるときに起こる何かしらの要因によって、頭の中の神経系の発達がおかしくなり、統合失調症になるのではと考えられています。以前からネズミではこの仮説はよく研究されておりますが、ヒト神経細胞を用いた発達障害仮説の研究は、ここ数年で始まったばかりです。我々のところでは、統合失調症の患者様由来の皮膚細胞からiPS細胞を作って神経系細胞に分化させてモデル細胞を樹立し、発達異常が起こるかどうか、そして起こる場合の仕組みはどうなっているのかなどの研究をしています。
♦ ゲノム編集はいつから始められましたか。
まず2014年にTALENを行い、2016年初めにCRISPR/Casを取り入れました。TALENはプローブ作製の難易度が非常に高くなかなかうまくいかなかったのですが、CRISPR/CasはgRNAの設計や作製も簡単で、特にノックアウトは効率よくできました。
♦ ゲノム編集を行う目的は何でしょうか。
統合失調症患者様で同定された遺伝子変異が、本当に統合失調症に関わっているのかを明らかにするためです。健常人由来細胞の特定の遺伝子をゲノム編集でノックアウトして異常が起こるかどうかを見ています。また逆に、患者様由来細胞の遺伝子変異を修復することで異常が直るかどうかも見たいと考えており、ノックインも検討中です。
♦ 弊社のゲノム編集関連製品をお知りになったきっかけは何ですか。
元々、iPS細胞の培地を探しているときに、タカラバイオが扱っているフィーダーフリー用培地のDEF-CSを見つけました。そしてタカラバイオ主催の技術セミナーに参加し、そこでタカラバイオのゲノム編集関連製品を知りました。
♦ 実際にお使いになっているタカラバイオのゲノム編集関連製品は何ですか。
♦ CRISPR/Casに対して何かご要望はありますか。
ノックイン効率がもっとよくなればと思います。また私の研究対象である統合失調症はヘテロ変異なので、モデル細胞もヘテロ変異がいいのですが、ホモ変異細胞ばかり取れ苦労しています。ヘテロ変異が効率よく起こせるようになればいいなと思います。
♦ 以上ありがとうございました。
Guide-it™ Mutation Detection Kit