下水疫学調査(下水サーベイランス)用リアルタイムPCRキット
【アストロウイルス/アデノウイルス】下水サンプルからのウイルス検出におけるDNA/RNA抽出キットの適合性評価
【結果】
NucleoMag DNA/RNA WaterおよびNucleoMag Pathogenは、アストロウイルスおよびアデノウイルスF種の両ターゲットにおいて、他社抽出キットA、他社抽出キットBと比較し、小さいCt値が得られた。特にNucleoMag DNA/RNA Waterは、両ターゲットにおいて最も小さいCt値が得られた。
NucleoSpin Virusは、アデノウイルスF種の検出において他社キットAと同等のCt値であったが、アストロウイルスの検出においては、他社抽出キットA、他社抽出キットBより小さいCt値が検出された。
図1.各DNA/RNA抽出キットから得られた精製核酸を鋳型としたリアルタイムRT-qPCR測定値(アストロウイルス)
図2.各DNA/RNA抽出キットから得られた精製核酸を鋳型としたリアルタイムRT-qPCR測定値(アデノウイルスF種)
表1.全下水サンプルにおける各DNA/RNA抽出キットの測定値の平均値±標準偏差
DNA/RNA抽出キット | Ct (mean± standard deviation) |
Astrovirus | Adenovirus F |
NucleoSpin Virus | 31.6±1.6 | 30.4±2.5 |
NucleoMag DNA/RNA Water | 30.9±1.7 | 27.9±2.1 |
NucleoMag Pathogen | 31.3±1.8 | 28.3±2.2 |
他社抽出キットA | 32.5±1.9 | 30.1±2.0 |
他社抽出キットB | 32.5±1.6 | 28.9±2.3 |
平均値が最も小さい値を赤色、最も大きい値を緑色で示した。
【方法】
- ウイルスの濃縮:PEG沈殿法
- 40 mlの下水サンプルにPEG8000を4.0 gおよびNaClを0.94 g添加し、混合する。
- 12,000×g 99分 4℃の条件で遠心する。
- 上清を除去する。
- 12,000×g 5分 4℃の条件で遠心する。
- 上清を除去する。
- 800 μlの滅菌水で沈殿物を懸濁する。
※従来法*の4℃での一晩の振とうおよびその後の遠心の工程を、手順2~5にて代用することにより作業時間を短縮しました。
*公益社団法人日本水環境学会COVID-19タスクフォース発行「下水中の新型コロナウイルス遺伝子検出マニュアル」(2021年3月)
- 核酸精製
上記の方法で得られたウイルス濃縮液から分取した200 μlについて、以下の方法による精製を行った。全てのキットにおいて最終溶出量は100 μlに統一した。
①NucleoSpin Virus
精製は手作業にてNucleoSpin Virusユーザーマニュアルに従い実施した。
②NucleoMag DNA/RNA Water
自動核酸精製装置MagnetaPure 32 Plus(製品コード 747010)のNucleoMag DNA/RNA Waterプリセットプログラムを使用した。NucleoMag DNA/RNA Waterユーザーマニュアルから下記を変更した。
<変更点>
- Lyse sample工程
濃縮サンプル200 μlにMWA1 250 μlを添加し、ボルテックスミキサーで10分間撹拌した後、Proteinase K 20 μlを添加し、56℃で15分間インキュベートした。
- Elute DNA工程
56℃でのインキュベートを追加した。
③NucleoMag Pathogen
NucleoMag Pathogenユーザーマニュアルに従いLyse sample工程を実施した。その後の工程は、自動核酸精製装置MagnetaPure 32 PlusのNucleoMag DNA/RNA Waterプリセットプログラムを使用した。
- リアルタイムPCR反応組成:取扱説明書記載の通り
- リアルタイムPCR装置:Thermal Cycler Dice Real Time System III (Cy5) with PC(製品コード TP990)
- リアルタイムPCR条件:
25℃
42℃
95℃
95℃
56℃
10 min.
5 min.
30 sec.
5 sec.
30 sec.
45 cycles
※本手順およびデータは、弊社との共同研究を通じて、国立大学法人山梨大学 国際流域環境研究センター 原本英司教授よりご提供いただきました。
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