SMART-Seq Human BCR (with UMIs)は、5'RACE法とNGSテクノロジーを組み合わせた高感度で正確かつ最適化されたアプローチを提供することにより、RNAサンプルから、ヒトBCRレパトア解析用の高品質ライブラリー調製が可能なキットである。5'RACE法の採用によりバイアスを減らし、BCRのH鎖またはL鎖の定常領域からのプライミングを可能にする。本キットは、遺伝子特異的増幅におけるこれらの利点を組み合わせて、BCR転写産物のV(D)J可変領域全体をキャプチャーし、高感度で再現性の高いB細胞レパトア解析を可能にする。
本キットは、末梢血単核細胞(PBMC)から精製した10 ng~1 µgのtotal RNAまたはB細胞から精製した1~100 ngのtotal RNAから、高品質のイルミナ社次世代シーケンサー用ライブラリーを調製し、同一サンプルから異なる鎖(IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、IgK、IgL)を高感度に検出することができる。本キットには、分子バーコード(UMI)が含まれており、PCRエラー、duplicateやシーケンスエラーに由来するリードを除去できるため、より正確で信頼性の高い結果が得られる。
図1.SMART-Seq Human BCR (with UMIs)のワークフロー
SMARTScribe Reverse Transcriptase による1st strand cDNA合成を行い、mRNAの5'末端に達するとテンプレートに依存しないヌクレオチドが付加される。
SMART UMI Oligoは、この付加されたヌクレオチドにアニーリングし、逆転写反応によってヌクレオチドの追加配列をfirst stranded cDNAに組み込むためのテンプレートとして機能する。(これがtemplate switchingステップに相当する)次に、1 st strand cDNAを用いて2段階の遺伝子特異的PCR増幅を行う。nested PCRの2 nd PCRの産物は、大部分のリードがB細胞受容体転写物にマッピングされる。
図2.幅広いRNA量から同定された高感度かつ再現性の高いクロノタイプ
SMART-Seq Human BCR(with UMIs)を用いて、10、100、1,000 ngのヒトPBMC由来total RNAからヒトBCR重鎖(IgA/D/E/G/M)および軽鎖(IgK/L)ライブラリーを作製し、解析した。サンプル量に関わらず、安定した結果が得られた。
図3.インプット量に応じた一貫性を示すクロノタイプカウント
さまざまなインプット量のPBMC RNAおよびB細胞RNAから本製品を用いてヒトBCRライブラリーを調製した。
PBMC RNA(パネルA)では、200万リード、600万リード、1,200万リード、B細胞RNA(パネルB)では100万リード、500万リード、1,200万リードにダウンサンプリングし、解析した。インプットRNA量が増えるとクロノタイプカウントも増加し、さまざまなインプット量のサンプルでも安定したデータを取得できることが示された。(HC=重鎖、LC=軽鎖)
図4.既存製品(SMARTer Human BCR IgG IgM H/K/L Profiling Kit)、他社製品とのデータ品質の比較
10 ngのヒトPBMC Total RNAから、本製品(BCRv2)と既存製品(BCRv1)、および他社製品(N社)を用いてライブラリーを調製し、イルミナ社プラットフォームで配列決定した。
パネルA. シーケンス後、すべてのライブラリーを100万リード以下までダウンサンプリングした。BCRv2は、既存製品に比べ、約5.5倍多くのクロノタイプを検出した。
パネルB. N社のライブラリーは100万リード、BCRv2のライブラリーは重鎖・軽鎖それぞれ50万リードまでダウンサンプリングした。BCRv2は重鎖(HC)と軽鎖(LC)それぞれのアイソタイプで約9,500リードと22,900リードのクロノタイプを生成し、N社に対して1.27倍のクロノタイプカウントを得られた。
図5.高感度な少量クロノタイプ検出
10 ngのPBMC RNAにTIB-190細胞株から抽出したRNAを100 pg、10 pg、1 pg、0.1 pgスパイクインした。
パネルA. 各RNA量をスパイクインした際に検出されたクローン数を表に示した。ライブラリーは20万リードにノーマライゼーションし、UMIを用いたエラー補正後にすべてのカウントを測定した。
パネルB. スパイクインRNAの割合と検出されたクロノタイプの相関を示した(グラフは両軸とも対数変換済み)。本製品で検出したスパイクインRNAサンプル(濃度0.001%~)とクロノタイプは、正の相関を示した。
図6.レプリケート間、シーケンスプラットフォーム間での高い再現性
本製品を用いて10 ngのPBMC RNAと1 ngのB細胞RNAからBCRライブラリーを調製した。
パネルA. 10 ng PBMC RNAからライブラリー調製し、イルミナ社 Miseqプラットフォームでシーケンスした2つのテクニカルレプリケートは、高いクロノタイプ重複(87%)を示した。
パネルB. 1 ngのB細胞からライブラリー調製し、MiSeq用試薬キットV3(600サイクル)とV2(300サイクル)を用いてシーケンスしたライブラリーを比較した。同様に、MiSeq(600サイクル)とMiniSeq(300サイクル)も比較した。すべてのライブラリーは100万リードにダウンサンプリングし、解析を行った。どちらの比較においても、85%、87%と高いクロノタイプ重複を示した。
図7.既存製品(SMARTer Human BCR IgG IgM H/K/L Profiling Kit)との検出アイソタイプの比較
各アイソタイプで、既存製品よりも多くのクロノタイプカウントを取得できた。
図8.バイオロジカルレプリケートにおける、クロノタイプ上位100個の相関解析