ワクチンやその他のバイオ医薬品の製造においては、最終製品中に残留している宿主細胞由来のDNA量が、許容される一定範囲内であることが保証されなければなりません。
最終製品中の残留宿主細胞DNAの存在は、宿主細胞やウイルスに由来する癌遺伝子が伝播する可能性(特に細胞基材が造腫瘍性細胞である場合)や、ウイルスDNAから感染性ウイルスが産生される可能性、そして遺伝子の調節領域への挿入による異常遺伝子の発現の可能性を引き起こすため大きな懸念材料となります。したがって、宿主細胞やベクターに由来するDNAを、適切な感度を備えた分析技術で検出し、そして定量する必要があります。
宿主細胞由来の残留DNAの定量は、バイオ医薬品の製造や、プロセスバリデーション及び臨床ロットの純度試験の一部となるため重要な試験です。ガイドラインは臨床ロットにおける残留DNAの最大許容量を厳密に規定しています。例えば、継代数の少ないVero細胞のように、造腫瘍性を持たない細胞株を使ったワクチン製造の場合、投与あたり最大10 ngまでと規定されています。また、継代細胞株のDNAは大きなリスクを引き起こすものとみなされる場合があります。例えばその細胞がレトロウイルスのプロウイルス配列を含む場合、残留DNA量は投与あたり最大100 pgまでと推奨されています。投与あたりの最大許容残留DNA量は、多くの場合、製品によってケースバイケースで設定されます。
本試験では、Applied BioSystems sequence detection TaqMan assayを使用し、残留宿主細胞DNAを正確に定量することが可能です。増幅する配列によりますが、多くの場合1.8 pg/mlの感度が達成できています。また、以下の細胞(表1)に関してICH Q2に従ってバリデートされた宿主細胞残留DNA試験をご提供いたします。
表1-残留宿主細胞DNA試験動物種 | Study Plan Number | 検出限界 (pg/mL) |
定量限界 (pg/mL) |
---|---|---|---|
CHO | SP-M.8301 | 1.8 | 1.8 |
E.Coli | SP-M.8302 | 18.0 | 18.0 |
HEK293 PER.C6 | SP-M.8303/6 | 1800 | 1800 |
Canine (MDCK) | SP-M.8304 | 1.8 | 1.8 |
NS0 and SP2/0 | SP-M.8305 | 1.8 | 1.8 |
Vero | SP-M.8307 | 1800 | 1800 |
Yeast | SP-M.8308/9 | 18 | 18 |
Human | SP-M.8310 | 270 | 270 |
cGMPに適合するロットリリース試験には、残留宿主細胞DNA試験に対して詳細な阻害確認試験が求められています。阻害確認試験は、試験結果が要求されている規格に適合していることを保証するためのものです。これは、お客様の製品に応じてカスタマイズされることもあります。さらに、定量結果の信頼性を確保するため、試験毎に複数のコントロールを使用します。最初に検体中の干渉因子を不活化する処理をし、DNA抽出とqPCR試験の適切な検体量を決めるため、検体を段階希釈しそれぞれに2つの内部コントロールDNAをスパイクします。ICH Q2に従って真度、精度、検出限界、頑健性、定量限界についてバリデーションが実施され、それぞれの製剤のロットリリースの規格を保証します。
ICH Q2バリデーション報告書は、宿主細胞DNAのqPCR試験毎にご提供いたします。また、お客様の検体は、以下の欧州薬局方2.6.21のコントロールシステムに従って試験されます。