pBAsiシリーズは、RNA polymerase III (pol III)系のプロモーターを搭載したsiRNA発現用プラスミドベクターである。
pol III系のプロモーターの下流にヘアピン型RNAを発現させるための合成DNA配列を挿入し、siRNA発現プラスミドを作製する。得られたプラスミドは細胞に導入して、RNAi実験に使用することができる。(図1)
製品コード 3223~3225、3227、3228には、ネオマイシン耐性遺伝子またはピューロマイシン耐性遺伝子が搭載されているため、薬剤による導入細胞の選択が可能である。
また、「プロモーター+ヘアピン型RNA配列」を切り出して、容易にアデノウイルスベクターに乗せ換えることも可能である。組換えアデノウイルスの作製に関しては
Adenovirus Dual Expression Kit(製品コード 6170)を利用できる。
図1 ヘアピン型RNA発現ベクター
pBAsiベクターシリーズではプロモーター/薬剤耐性遺伝子の異なるプラスミドベクターを用意している。
pBAsi-hH1 DNA:human H1 promoter (Accession No.S68670)を搭載。
pBAsi-hU6 DNA:human U6 promoter (Accession No.X07425)を搭載。
pBAsi-mU6 DNA:mouse U6 promoter (Accession No.X06980)を搭載。
図2 pBAsiベクターシリーズの制限酵素地図 ヘアピン型RNAを発現させるためには、[Ligation用の制限酵素サイト+標的配列(センス)+ループ配列+標的配列(アンチセンス)+ターミネーター配列+Ligation用の制限酵素サイト]の順でデザインした合成DNAをプロモーターの下流に挿入する。pBAsi ベクターのクローニングサイトは、上流側は
BamH I、下流側は薬剤耐性遺伝子を含まない場合は
Xba I、
Sse8387 I、
Hind III、
Sal I、
Acc I、
Hinc II、
Pst I、
Sph Iのいずれか、ピューロマイシン耐性の場合は
Xba I、
Sse8387 I、
Hind III、
Pst Iのいずれか、ネオマイシン耐性の場合は
Xba I、
Sse8387 I、
Hind III、
Sal I、
Acc Iのいずれかを使用できる。
例えば、
BamH I、
Hind IIIに挿入する場合には、下図に示すような合成オリゴDNAを作製する(Top strandとBottom strandの2本; N部分が標的配列)。pol III系プロモーターの転写開始点はプリン塩基(GまたはA)が好ましいため、標的配列がGまたはAで始まらない場合は標的配列の前にGまたはAを挿入する。
ここではループ配列の例としてCTGTGAAGCCACAGATGGG(Boden
et al. 参考文献 1)を挙げているが、GTGTGCTGTCC(Miyagishi
et al. 参考文献 2)も有用であることが確認されている。また、これ以外のヘアピンループとして、Lee
et al.(参考文献 3)、Paddison
et al. (参考文献 4)、Paul
et al.(参考文献 5)、Sui
et al. (参考文献 6)らによってそれぞれ異なった配列が報告されている。
ターミネーター配列には、TTTTTT配列を用いる(Tが4つ続くとpol III系プロモーターによる転写が止まる)。siRNA配列と用いるヘアピンループ配列の組み合わせによってはTが4つ以上続く可能性があるため、合成DNAをデザインした後には必ず、Top strandにTが4つ以上続いていないことを確認することが必要である。