血中循環腫瘍細胞(CTC)のゲノム解析
- Tumourigenic non-small-cell lung cancer mesenchymal circulating tumour cells: a clinical case study.
Morrow, C. J. et al. Ann. Oncol. (2016) 27, 1155-1160.
この論文では、進行期の転移性非小細胞肺癌(NSCLC)患者から採取した循環腫瘍細胞(CTC)を用いて、patient CTC-derived explant(CDX)モデルを作製しています。CTCを濃縮し免疫不全マウスに移植した後、形成された腫瘍をドナー患者の診断用標本と、形態学的、免疫組織化学的、遺伝学的に比較しました。CDXモデルの腫瘍について、全エキソームシーケンス解析を実施しました。PACRG遺伝子内のG340A変異を検証するため、濃縮フィルターからレーザーキャプチャーマイクロダイセクションにてCTCを回収した後、DNAを抽出し、PicoPLEX WGA Kitを用いて全ゲノムを増幅し、最後に、遺伝子座特異的プライマーを用いて、サンガー法によるシーケンスを行いました。
- High-Resolution Genomic Profiling of Disseminated Tumor Cells in Prostate Cancer.
Wu, Y. et al. J. Mol. Diagnostics (2016) 18, 131-143.
この研究では2~40個の細胞サンプル中のゲノムコピー数変化を高い再現性で検出するために最適化された頑健な手法を報告しています。骨髄穿刺液から播種性腫瘍細胞(DTC)を分離し、PicoPLEX WGA Kitを用いて全ゲノムを増幅しました。その後、高解像度一塩基多型(SNP)アレイプラットフォームおよび精密な計算アルゴリズムを用いて、増幅後のサンプルを解析しました。生物学的な洞察を得るために、同じ患者から分離したDTCと転移腫瘍巣におけるコピー数変化を比較しました。
- An improved CTC isolation scheme for pairing with downstream genomics: Demonstrating clinical utility in metastatic prostate, lung and pancreatic cancer.
Premasekharan, G. et al. Cancer Lett. (2016) 380, 144-52.
この研究では、癌患者から採取した末梢血から、浸潤性を示すCTCを回収し解析するために、セルソーティングと細胞接着アッセイ(adhesion matrix(CAM)assay)を組み合わせて使用しています。回収された細胞の全ゲノムをPicoPLEX WGA Kitにて増幅した後、比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)アレイによってコピー数のプロファイリングを行いました。
- Establishment and Characterization of a Cell Line from Human Circulating Colon Cancer Cells.
Cayrefourcq, L. et al. Cancer Res. (2015) 75, 892-901.
この論文では、結腸癌患者由来のCTCから細胞培養および永久細胞株を樹立し、ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオミクスおよびセクレトームレベルで細胞の特性を明らかにしました。ゲノム解析については、次世代シーケンス解析によってコピー数多型のプロファイルを調べました。PicoPLEX WGA Kitを用いて、シングルセルまたはスフェアの全ゲノムを増幅後、ライブラリーを構築し、HiSeq 2500装置を用いてシーケンスを解析しました。
全ゲノム増幅と染色体異数性スクリーニング
- Microarray-CGH for the Assessment of Aneuploidy in Human Polar Bodies and Oocytes.
Jaroudi, S. & Wells, D. In: Mammalian Oocyte Regulation, 267-283 (Humana Press, Totowa, NJ, 2013). doi:10.1007/978-1-62703-191-2_19
この論文は、全ゲノム増幅およびマイクロアレイテクノロジーにおける最近の技術革新が、ヒト卵母細胞および極体から単離したシングルセルに含まれる全染色体のコピー数の高精度解析の手段として利用されている状況を報告しています。
使用キット:PicoPLEX WGA Kit
- Identification of chromosomal errors in human preimplantation embryos with oligonucleotide DNA microarray.
Liang, L. et al. PLoS One (2013) 8, e61838.
ヒト胚の着床前遺伝子スクリーニングでの正確な異数性スクリーニングに、NimbleGen社のオリゴヌクレオチドマイクロアレイプラットフォームを使用できるか否かを検討しています。母体年齢が高いか流産歴のあるドナー由来の胚盤胞の染色体異常解析に、オリゴマイクロアレイプラットフォームおよびPicoPLEX WGA Kitによる全ゲノム増幅を使用し、従来のFISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)法と比較しています。コピー数多型(CNV)や軽微な異常を含む染色体異常を有する胚盤胞の58.1%の変異率が、DNAマイクロアレイ法を使用して高い感度および再現性で検出されました。
マイクロバイオーム解析(DNA)
- Metagenome-assembled genomes uncover a global brackish microbiome.
Hugerth, L. W. et al. Genome Biol. (2015) 16, 279.
著者らは、バルト海から時系列的に回収したメタゲノムから多くの細菌プランクトンのゲノムを再構築しました。エーランド島(スウェーデン)の沖合10 kmに位置するLMOにて、水深2 mの水サンプルを、Ruttner式採水器を用いて、2012年3月から12月に37回採取しました。全サンプルは、採取日を文字と図(年月日形式)で識別し、3.0 μmおよび0.22 μm孔径のフィルターで連続ろ過しました。0.22 μm分画をDNA抽出に使用しました。DNA抽出、植物プランクトンのカウント、およびクロロフィルなどの栄養素の測定手順を報告しています。ThruPLEX DNA-Seq Kitを説明書に従って使用し、各サンプルからDNA(2~10 ng)を調製しました。精製には、MyOneカルボン酸コーティング超常磁性ビーズ(Invitrogen)を使用しました。最終ライブラリーを、SciLifeLab/NGI(ソールナ、スウェーデン)にてIllumina HiSeq 2500によるシーケンス解析を行いました。2×100 bpペアエンドによるリード数は平均で3,190万リードでした。
- Antimicrobial resistance in selected environments in Norway: occurrence of antimicrobial resistant bacteria (ARB) and antimicrobial resistant genes (ARG) associated with wastewater treatment plants (WWTPs). Katrine, J. (2017). www.genok.no
著者らは、ノルウェーの2地点の排水処理施設で、培養ベースの方法に分子的手法およびメタゲノム解析を組み合わせて、抗菌剤耐性菌および抗菌剤耐性遺伝子の存在状況を調査しました。著者らの目的は、環境中の抗菌剤耐性(AMR)とAMRの拡大(臨床現場から環境への拡大と、環境からヒトおよび動物の病原体への拡大)の間の関係の特定についての理解を深めることでした。サンプルは-20℃で直ちに凍結させ、DNA抽出まで凍結保存しました。DNAサンプルをOslo大学のNorwegian Sequencing Centre(NSC)に送り、ThruPLEX DNA-Seq Kitを用いたメタゲノムライブラリー調製と、Illumina MiSeq PE300プラットフォームを用いたシーケンス解析を行いました。
- Potential for hydrogen-oxidizing chemolithoautotrophic and diazotrophic populations to initiate biofilm formation in oligotrophic, deep terrestrial subsurface waters.
Wu, X. et al. Microbiome (2017) 5, 37.
この研究では、フローセルを流入源、および光が生命活動に利用されている地表からの深さが異なる地下水(新しい海水または古い塩水)が存在する掘削孔に設置しました。著者らは、16S rRNA遺伝子のシーケンス解析を用いて、プランクトン集団および付着集団が採取場所により異なっていたこと、また、メタゲノムの遺伝子頻度から、2つの帯水層では、水素消費集団、二酸化炭素固定集団および窒素固定集団がバイオフィルム形成に関与すると推察されることを示しました。ガーネット粒から抽出されたDNAのメタゲノムライブラリーは、ThruPLEX DNA-Seq Kitおよび96種類デュアルインデックスを用いて調製しています。
テクノロジー比較
- The comparison of the performance of four whole genome amplification kits on ion proton platform in copy number variation detection.
Zhang, X. _et al. Biosci. Rep. (2017) 37, BSR20170252.
この論文では、市販の4種類の全ゲノム増幅(WGA)キット(PicoPLEX WGA Kit、GenomePlex Single Cell Whole Genome Amplification Kit、MALBAC Single Cell Whole Genome Amplification Kit、REPLI-g Single Cell Kit)についてコピー数多型(CNV)検出の性能を比較しています。核型が異なる6種類の細胞株を使用し、1個、または3~5個の細胞、および精製したgDNA 15pgをサンプルとしてWGA反応に用いました。それぞれ次世代シーケンス(NGS)用ライブラリーを構築し、Ion Protonプラットフォームを用いたシーケンス解析をしました。この研究は、「PicoPLEXが、シーケンス解析データの質、読み取り深度の均一性、増幅の再現性および正確性に関して最も高い性能を示し」、「Ion Protonプラットフォームを用いたCNV検出には[PicoPLEX]が推奨される」と結論付けました。
- Comparative study of whole genome amplification and next generation sequencing performance of single cancer cells.
Babayan, A. et al. Oncotarget (2017) 8, 56066-56080.
この論文では、市販の3種類の全ゲノム増幅(WGA)技術、PicoPLEX WGA Kit、REPLI-g Single Cell Kit、およびAmpli1 WGA Kitの性能を比較しています。EDTA保存血液、またはCellSaveチューブ保存血液にスパイクして得られたシングル、またはプールドの腫瘍細胞(SK-BR-3)、および保存材料(FFPE)から得られた細胞(SK-BR-3)を用い、全ゲノム増幅を行いました。増幅されたDNAは、エキソームをキャプチャー後、Illumina HiSeq 2000およびThermo Fisher Ion Protonプラットフォームの両方を用いてシーケンスを解析しました。この研究は、PicoPLEX WGA Kitによって得られたコピー数異常(CNA)プロファイルが最も正確で、「非増幅DNAに最も近い結果であった」と結論付けました。
その他
- Genome sequencing of a single tardigrade Hypsibius dujardini individual.
K. Arakawa et al., Sci. Data. (2016) 3, 160063.
緩歩動物、クマムシの単一個体由来の超微量ゲノムDNAを用いたゲノムシーケンス解析手法の確立および再現性と網羅性に優れた解析
使用キット:ThruPLEX DNA-Seq Kit
※各文献の日本語要約は簡潔さを優先しております。ご利用の際には必ず原著論文をご確認ください。