高電圧パルスにより細胞膜を一時的かつ可逆的に破断することにより、DNAを細胞に移入するエレクトロポレーション法はさまざまな形質転換法のうち最も効果的な方法の1つとされている。従来のCa
2+存在下で調製するコンピテントセルに比べ、形質転換効率および結果の再現性も優れており、貴重な実験時間を節約し、少量のサンプルを大腸菌に導入する際に特に威力を発揮する。タカラバイオでは、独自の培養法により効率の高い4種類のElectro-Cells
E. coli HST08 Premium、JM109、DH5α、HB101を調製している。
(注意)これらの製品は、ヒートショックによる形質転換には使用できません。ヒートショックによる形質転換には
E. colii Competent Cellsをご利用ください。
高効率α-相補性選択宿主E. coli HST08 Premium
E. coli HST08 Premiumは外来のメチル化DNAを切断する遺伝子群
mrr-
hsdRMS-
mcrBC,と
mcrAを欠失している。その上、非常に高い形質転換能力を持っているため、メチル化されたDNAのクローニングから、遺伝子ライブラリーの作製、BACベクターなどを使用した長鎖ゲノムライブラリー作製等に広く使用できる。
また長鎖プラスミドDNAの形質転換能力にも優れており、またコロニー形成速度も速いため
*、TaKaRa DNA Ligation Kit LONG(製品コード 6024)と組み合わせることで、10 kb以上の長鎖DNA断片のクローニングやライブラリー作製も容易に行える。
* 同様の遺伝子型を持つ他のコンピテントセルと比較した場合。
pUC系プラスミドでの形質転換の際には、β-ガラクトシダーゼのα-相補性を利用し、X-Gal添加により組換え体の選別が容易となる。
(X-Gal:5-Bromo-4-Chloro-3-Indolyl-β-D-Galactoside)
α-相補性選択宿主E. coli JM109
E. coli JM109は、pUC系プラスミドベクターDNAによる形質転換やM13ファージベクターDNAでの形質導入等を行う際に、ベクターDNAより生成する
lacZαペプチドとJM109F'にコードされる
lacZΔM15とによるβ-ガラクトシダーゼの活性回復(α-相補性)を利用することにより、組換え体の選別を容易にする菌株である。F'プラスミドを有するため、遺伝子ライブラリーの作製やサブクローニングの他に、M13ベクターDNAの宿主として一本鎖DNAの調製にも利用できる。
α-相補性選択宿主E. coli DH5α
pUC系プラスミドを使用して遺伝子ライブラリーの作製、サブクローニングを行った場合、本宿主菌と組み合わせると、β-ガラクトシダーゼのα-相補性を利用してX-Galによる組換え体の選別が容易となる。
deoR変異により、サイズの大きなプラスミドの導入が可能である。
高効率汎用宿主E. coli HB101
E. coli HB101は、組換えDNA技術の開発当初より汎用され、遺伝的形質も安定した使用しやすい菌株である。