製品説明
pMEI-5 DNAは高発現遺伝子導入用レトロウイルスベクターを調製するためのレトロウイルスベクタープラスミドである。
本ベクターは、LTRとパッケージングシグナル(Ψ配列)以外のMoMLV由来遺伝子(
gag, pol, envコード配列)を含まず、かつ、細胞へ導入した後の目的遺伝子の発現効率をさらに向上させるために、クローニングサイトの上流にスプライシング能の高いヒトEF1α由来のイントロンを持ち、非常に高い転写能が得られる点が特徴である。また、pMEI-5 Neo DNA(製品コード 3655)は薬剤選択マーカーとしてネオマイシン耐性遺伝子を有している。
本製品を用いることで、pDON-AI-2シリーズに比べ、高い遺伝子発現が期待でき、導入遺伝子を高発現させることが可能になった。
pMEI-5 DNAベクターの構造 保存
-20℃
形状
10 mM |
Tris-HCl (pH8.0) |
1 mM |
EDTA |
特長
標的細胞へ目的遺伝子を導入し発現させる方法としては、エレクトロポレーション等の物理的方法や、DEAE-デキストランやリポソーム、リン酸カルシウム等を用いる化学的方法がある。またこれらに加え、ウイルスベクターを用いた外来遺伝子の高効率的導入法の研究も進んでいる。この方法で現在用いられている代表的なウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクチニアウイルス等がある。特にレトロウイルスベクターを用いた遺伝子導入には、次のような利点がある。
1) |
導入遺伝子が染色体に組み込まれるため、長期間、安定に遺伝子の発現ができる。導入遺伝子を染色体に組み込む能力のない他のベクターでは、導入遺伝子が細胞内で分解されたり、細胞分裂にともない希釈されてしまう。そのため、遺伝子発現は一過性で持続しない。レトロウイルスベクターは、染色体に組み込まれるため、安定で分裂後も確実に伝搬される。 |
2) |
レトロウイルスを除いた他のウイルスベクターの作製には複雑な作製手順が必要だが、レトロウイルスの場合は、比較的容易にウイルスベクターを作製することが可能である。 |
3) |
増殖期にある多くの細胞種への遺伝子導入が可能である。とりわけ、物理・化学的手法ではほとんど遺伝子導入できなかった造血幹細胞にも、フィブロネクチンフラグメント(RetroNectin [製品コード T100A/B])を用いることにより、レトロウイルスベクターを介した高効率での遺伝子導入が可能となった。 |
レトロウイルスベクター
- (1)構造
- レトロウイルスは、(+)一本鎖RNAをゲノムとする約 100 nmの粒子で、感染後、RNAゲノムがDNAに逆転写された後、宿主染色体に組み込まれる。ウイルスゲノムは、gag、pol、envの3種類のコーディング領域と両端のLTR(long terminal repeat)から構成されており、LTRには、遺伝子の発現に必要なプロモーター、エンハンサー、ポリAシグナル等のエレメントが含まれている。また、5’側のLTRの内側には、RNAウイルスゲノムがウイルス粒子の中に取り込まれるために必要なパッケージングシグナル(Ψ)が存在する。
レトロウイルスのプロウイルスDNAの構造
すべてのレトロウイルスは、基本的には同様な遺伝子構成をしている。ここではモロニーマウス白血病レトロウイルス(MoMLV)の場合を例として示す。
- (2)感染機序
- レトロウイルスは、まずエンベロープ糖タンパクと標的細胞の受容体との特異的結合を介して細胞膜に吸着し、RNAゲノムを含むウイルスコアを細胞内に放出する。細胞内に入ったRNAゲノムは自らの逆転写酵素によって二本鎖DNAに逆転写された後、宿主染色体に組み込まれてプロウイルスDNAとなり、感染が成立する。プロウイルスDNAはRNAに転写され、一部はmRNAとして、また一部はRNAゲノムとして機能する。これらによって宿主細胞内部でウイルスコアが形成され、最終的にはエンベロープ糖タンパクを露出した細胞膜に被われながら細胞外に放出(出芽)されていく。
レトロウイルスの生活環
野生型レトロウイルスの感染では、染色体に組み込まれたウイルスゲノムから新たなウイルス粒子が形成され、細胞外に放出される。
レトロウイルスベクターpDON-AI DNAを用いた遺伝子導入の原理
Ψ配列を取り除いたプロウイルスDNA(ヘルパープラスミド)が導入された細胞では、プロウイルスから生成したRNAゲノムがウイルス粒子内に取り込まれないため、空のウイルス粒子が作られる。このような細胞はパッケージング細胞と呼ばれる。ウイルスゲノムDNAから両端のLTRとΨ配列を残して目的の遺伝子を挿入したベクタープラスミドを、このパッケージング細胞に導入すると、ベクターDNAが宿主染色体に組み込まれた後、転写によって生じたベクターRNAゲノム(Ψ配列を含む)がウイルス粒子内に取り込まれてベクターウイルス粒子が生成する。このようにして作製されたウイルス産生細胞株(プロデューサー細胞)は、感染性のベクターウイルス粒子を生産して培地中に放出する。得られた高力価の組換えレトロウイルスを標的細胞に感染させることにより、目的の遺伝子を容易に導入することができる。
2,3)なお、組換えウイルスは複製能を欠損しているので、ヘルパーウイルスが混入していない限り、感染標的細胞からウイルス粒子が新たに生産されることはない。
組換えレトロウイルスベクターの調製と導入遺伝子の発現
pMEI-5のDNAシーケンスデータ
ZIP形式で圧縮しておりますが、StuffIt Expander等でも解凍できます。
純度
- dideoxy法によるシーケンスの結果、クローニングサイトが保持されていることを確認している。
- 制限酵素PmaC l, Apa l, Sac ll, Not l, Bgl ll, Cla l, BamH l, Sal l, Hpa l(pMEI-5 DNAのみ Xho Iも)にて1ヵ所切断できることを確認している。
用途
レトロウイルスベクターを介した動物細胞への遺伝子導入。
使用上の注意
本製品をご使用の際には、以下の点にご注意ください。
研究目的以外の使用に関するライセンス
本製品を研究目的以外に使用される場合は、個別にライセンス契約の締結が必要です。事前に弊社にお問い合わせください。
本レトロウイルスベクターの系によって生産されるウイルス上清は、挿入断片によっては危険なウイルスを含む恐れがあるため、組換えレトロウイルスの生産と取扱いには、適切な処置をとる必要があります。ご利用の際は、管轄省庁および組織内安全委員会の定める組換えDNA 実験指針に従ってください。
本製品の使用によって生じたいかなる事故、損害についても、弊社では責任を負いかねますので、ご了承の上ご使用ください。