Matchmaker Gold Yeast Two-Hybrid Systemは、GAL4ツーハイブリッドに基づき、未知のタンパク質-タンパク質間相互作用を検出、同定できる極めて優れたシステムである。本システムは、2つの栄養要求性レポーター(
ADE2、
HIS3)と、青白選択(
MEL1;α-galactosidase)による判定に加え、感度の高い抗真菌抗生物質Aureobasidin A(AbA)(1)に対する耐性遺伝子(
AUR1-C)をレポーターとして採用し、より簡単で厳密なスクリーニングが可能になった。
抗真菌抗生物質AbAは効果的に酵母を死滅させるが、Matchmaker Goldシステムで相互作用が見られる場合、酵母は
AUR1-Cレポーター遺伝子の発現によりAbA耐性を獲得し、AbA添加培地でも生育する。本システムでは、3種類のGAL4応答性プロモーターで制御される4種類のレポーターを利用してスクリーニングを行うことで、偽陽性クローンの出現を低減させ、より確実な陽性クローン取得を可能にする。
Yeast Two-Hybridシステム概要
GAL4 Yeast Two-Hybridシステムは、タンパク質間相互作用を酵母を用いて簡便に検出、同定できる非常に優れた解析手法である。GAL4タンパク質が、DNA結合ドメイン(DNA-BD)と転写活性化ドメイン(AD)の2つのモジュールからなり、それぞれに分割しても、分割された2つのドメインがプロモーター上でごく近傍に位置する場合、強い転写活性能を示すことに基づいている(2、3)。
Matchmakerシステムでは、既知の“bait(おとり)”遺伝子、および、未知の“prey(獲物)”遺伝子を、それぞれDNA-BD、および、ADとの融合遺伝子となるようにベクター構築して酵母を形質転換する。baitタンパク質とpreyタンパク質の2つのタンパク質間で相互作用が見られる場合のみ、GAL4タンパク質の機能が回復し、酵母ゲノム中にコードされたレポーター遺伝子の転写が活性化される(図1)。Matchmaker Goldシステムでは、相互作用するbaitとpreyを発現する酵母クローンは、4つのレポーター遺伝子により検出、同定される(図2)。ライブラリーを用いるスクリーニングでは、レポーター遺伝子を発現する候補酵母クローンが選択培地上に生育するため、プラスミドを回収し、さらなる解析やシーケンスに用いることができる。
図1. Yeast Two-Hybridシステムの原理
ライブラリー由来のpreyタンパク質(GAL4 ADと融合して発現)が、baitタンパク質(GAL4 DNA-BDと融合して発現)と相互作用し、レポーター遺伝子の転写を活性化する。 4種類のレポーター遺伝子により得られる真の陽性クローン
Matchmaker Goldシステムの相互作用検出の厳密性は、本システムで用いる新しいY2HGold酵母株が、3種類のGAL4応答性プロモーター(MEL1、GAL1、GAL2)から転写される4種類のレポーター遺伝子
AUR1-C、
HIS3、
ADE2、
MEL1を保持していることに基づいている(図2、表1)。特に4つめのレポーター遺伝子として新しく採用された
AUR1-C遺伝子の発現は、感度の高い抗真菌抗生物質AbAに対する耐性を酵母に付与するため、従来の栄養要求性レポーター遺伝子のみによるクリーニングで生じていた多数の偽陽性クローンの出現を大幅に低減させることができる。
これらのレポーター遺伝子はY2HGold酵母株のゲノム上にコードされており、4種類のレポーター遺伝子を活用することで、ある種のpreyタンパク質が一つのレポーター遺伝子上流のプロモーター領域に非特異的に結合し、偽陽性クローンを生じる可能性を強力に排除する。
Matchmaker Goldシステムでは、まず2種類のレポーター遺伝子(
AUR1-C、
MEL1)による一次スクリーニングを行い、続いて4種類のレポーター遺伝子(
AUR1-C、
MEL1、
HIS3、
ADE2)により厳密な選択を行う2段階スクリーニングを推奨している(図4:実験例1)。
図2. Matchmaker Goldシステムの4種類のレポーター遺伝子
preyタンパク質とbaitタンパク質が相互作用すると、Y2HGold酵母株のゲノム中にコードされた3種類のGAL4応答性プロモーター(MEL1、GAL1、GAL2)制御下にある4種類のレポーター遺伝子の転写が活性化される。AbA耐性と2種類の栄養要求性レポーターによる培地上での生育の可否によって選択を行い、さらにα-galactosidaseレポーターによりX-α-Gal存在下でのコロニーの青色選択が行える。M1=MEL1 G1=GAL1 G2=GAL2
表1. Matchmaker Goldシステムの4種類のレポーター遺伝子
レポータータイプ | レポーター遺伝子 | 相互作用陽性のクローンの形質 |
抗生物質耐性 | AUR1-C | 抗真菌抗生物質Aureobasidin A(AbA)に耐性 |
発色 | MEL1 | X-α-Gal存在下でコロニーが青色を呈す |
栄養要求性 | HIS3 | ヒスチジンを含まない培地で生育可能 |
栄養要求性 | ADE2 | アデニンを含まない培地で生育可能 |
形質転換済みのMate & Plateライブラリー
スクリーニング用のライブラリーには、Y187酵母株に形質転換済みの各種
Mate & Plateライブラリーが利用できる。Mate & Plateライブラリーとbaitタンパク質を発現するY2HGold株を共に培養し接合させるだけで、簡単にライブラリーから相互作用タンパク質をスクリーニングできる。また、
Make Your Own “Mate & Plate” Library Systemを用いて、ご自身のサンプルからY187酵母株にオリジナルのライブラリーを構築することも可能である。
Matchmaker Goldシステムと酵母に導入済みのMate & Plateライブラリーを用いることで、最先端で最も簡便なYeast Two-Hybridスクリーニングをお試しください。
図3. Mate & Plateプロトコール
preyタンパク質を発現するMate & Plateライブラリー(Y187酵母株に導入済み)を、baitタンパク質を発現するY2HGold株と共に培養して接合させることで、簡便にライブラリーから相互作用タンパク質をスクリーニングできる。
実験例
図4. 【実験例1】二段階スクリーニングにより高い割合で陽性クローンが得られるMatchmaker Goldシステム
マウスOct4転写因子のPOUドメインをbaitにもつY2HGold酵母株と、Mate & Plate Universal Mouse Normalized Libraryを用いてOct4結合タンパク質のスクリーニングを行った。2種類のレポーター遺伝子(
AUR1-C、
MEL1)による一次スクリーニング(選択培地:DDO+AbA, 60 ng/ml+X-α-Gal)により32コロニーをピックアップし、各コロニーを同じ選択条件培地(パネルA)ならびに4種類のレポーター遺伝子(
AUR1-C、
MEL1、
HIS3、
ADE2)による厳密な選択培地(QDO+AbA, 60 ng/ml+X-α-Gal)(パネルB)に植え継ぎした。その結果、32コロニーのうち25コロニーが4種類のレポーター遺伝子すべてが活性化されている陽性コロニーであることが確かめられた。
DDO=Double dropout medium:SD/-Leu/-Trp
QDO=Quadruple dropout medium:SD/-Ade/-His/-Leu/-Trp
baitタンパク質発現用pGBKT7 DNA-BDベクターの選択マーカー:
TRP1
preyタンパク質発現用pGADT7 ADベクターの選択マーカー:
LEU2
注:現在、ユーザーマニュアルでは、125 ng/ml濃度のAbAを含む培地上で、ライブライースクリーニングを行うことを推奨しています。
図5. 【実験例2】3種類のbait/preyペアを用いたAbA耐性の比較
3種類のbait/prey融合タンパク質ペアをそれぞれ発現するY2HGold酵母株を用いて、各濃度のAbAを含むDDO(SD/-Trp/-Leu)寒天培地上でのコロニー形成能を調べた。各酵母のコロニー形成能はbait/prey融合タンパク質ペア間の相互作用の強度を反映することが分かる。
陰性コントロールペア(BD-POUmOct4+AD-null)、相互作用が推定されるペア(BD-POUmOct4+AD-E2I)、陽性コントロールペア(BD-p53+AD-T-Ag)
内容
- Box 1:
-
・pGBKT7 DNA-BD Cloning Vector
・pGADT7 AD Cloning Vector
・pGBKT7-53 Control Vector
・pGADT7-T Control Vector
・pGBKT7-Lam Control Vector
- Box 2:
-
・S. cerevisiae Y2HGold
・S. cerevisiae Y187
- Box 3:
-
・YPDA Broth
・YPDA with Agar
・SD/-Leu with Agar
・SD/-Trp with Agar
- Box 4:
-
・Yeastmaker Yeast Transformation System 2
Yeastmaker Carrier DNA
pGBT9
- Box 5:
-
・Yeastmaker Yeast Transformation System 2
50% PEG
1 M LiAc (10X)
10X TE Buffer
YPD Plus Liquid Medium
保存
Box 1、Box 4:-20℃
Box 2:-70℃
Box 3、Box 5:室温