DNAシーケンス
ChIP-Seq
-
Evolutionary re-wiring of p63 and the epigenomic regulatory landscape in keratinocytes and its potential implications on species-specific gene expression and phenotypes.
I. Sethi, et al. Nucleic Acids Res. (2017), 1-17.
ケラチノサイトにおけるp63の進化的再構成とエピジェネティックな制御機構および種特異的遺伝子発現と表現型との関連
使用キット:ThruPLEX DNA-Seq Kit
-
Mammalian Period represses and de-represses transcription by displacing CLOCK–BMAL1 from promoters in a Cryptochrome-dependent manner. Proc.
Y.-Y. Chiou, et al. Natl. Acad. Sci. (2016) 113, E6072-E6079.
クリプトクロム依存的にプロモーターからCLOCK-BMAL1を置換することによる概日リズム の転写の制御
使用キット:ThruPLEX DNA-Seq Kit
-
Efficient derivation of stable primed pluripotent embryonic stem cells from bovine blastocysts.
Y. S. Bogliotti et al. Proc. Natl. Acad. Sci., (2018). doi: 10.1073/pnas.1716161115
ウシ胚盤胞から安定した初代胚性幹細胞の効率的な誘導を行い、H3K27me3抗体と抗H3K4me3抗体を用いて、胚性幹細胞のChIP-Seqを実施しました。
使用キット:ThruPLEX DNA-Seq Kit
- Genome-wide analysis of RNA Polymerase II termination at protein-coding.
Baejen, C. et al. Genes. Mol. Cell (2017) 66, 1-12.
この論文では、RNAポリメラーゼII(RNA Pol. II)による転写が酵母でどのように起こるのかを解明するため、ChIP-Seq、ChIP-qPCR、およびその他の機能ゲノミクス手法を用いています。ThruPLEX DNA-Seq Kitを用いて、ChIP-Seqライブラリーを作製しました。著者らは出芽酵母における3'-転移にPol II伸長因子Spt5が必要であり、DNAからのポリメラーゼIIの遊離にRat1エキソヌクレアーゼが必要であることを示しました。
- Transcriptional landscape of the human cell cycle.
Liu, Y. et al. PNAS (2017) 114, 3473-78.
この論文ではChIP-Seq、DNase-Seq、RNA-Seq、およびGRO-Seqを組み合わせて、細胞周期にわたる転写ランドスケープを調べています。ThruPLEX DNA-Seq Kitを用いて、ChIP-SeqおよびDNase-Seqのライブラリーを調製しています。著者らは、MCF-7乳癌細胞株をモデルとして使用し、転写と定常状態のRNA発現の間に時間差があることを細胞周期レベルで明らかにしています。また、細胞周期の進行における転写およびエピジェネティックな変動の重要性を報告しています。
- Genome-wide identification of regulatory elements in Sertoli cells.
Maatouk, D. M. et al.. Development (2017) 144, 720-30.
この研究では、性決定過程におけるマウスセルトリ細胞の調節因子を同定するため、ChIP-Seq、DNaseI-Seq、およびRNA-Seqを行いました。FACSで分取したマウスセルトリ細胞から、ThruPLEX DNA-Seq Kitを用いてChIP-Seqライブラリーを調製しています。DNaseI-SeqのピークとH3K27acのクロマチンランドスケープの間のオーバーラップにより、性決定の初期段階においてセルトリ細胞のみで活性を示すエンハンサーが同定されました。
- Chromatin immunoprecipitation from fixed clinical tissues reveals tumor-specific enhancer profiles.
Cejas, P. et al. Nat Med. (2016) 22, 685-691.
この論文では、ヒストンマークの正確な検出を行うために、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織サンプルからの可溶性クロマチンの確実な抽出による固定化組織からのクロマチン免疫沈降シーケンス(fixed-tissue chromatin immunoprecipitation sequencing:FiT-Seq)と呼ばれる新しい方法を報告しています。ThruPLEX DNA-Seq Kitを使用して、FFPE標本からFiT-Seqライブラリー、新鮮凍結サンプルからChIP-Seqライブラリーを作製し、2種類のサンプル間でデータが互いに一致することを示しています。FiT-Seqを用いれば、腫瘍特異的エンハンサーおよびスーパーエンハンサーを明らかにし、既知の発癌性ドライバーとの相関を検討することにより、クロマチンの状態が遺伝子調節に及ぼす影響をさらに解明できることが示されました。
- Sp7/Osterix is restricted to bone-forming vertebrates where it acts as a Dlx co-factor in osteoblast specification.
Hojo, H. et al. Dev. Cell (2016) 37, 1-16.
この論文ではChIP-SeqおよびRNA-Seqを用いて、マウスの骨形成における転写因子Sp7/Osterixの役割を解析しています。著者らは、Sp7の結合部位をChIPにより同定可能にするため、Sp7タンパク質のC末端にビオチンモチーフおよび3つのFLAGエピトープを付加したトランスジェニックマウス系統を作製しました。骨芽細胞のエンハンサーを同定するため、ThruPLEX DNA-Seq Kitを用いてChIP-Seqライブラリーを作製しました。著者らは、Spファミリーに属するSp7の出現は、脊椎動物の進化過程で骨形成を担う骨芽細胞が出現した際に重要な役割を果たした可能性が高いと結論付けました。
- Genomic characterization of metformin hepatic response.
Luizon, M. R. et al. PLOS Genet. (2016) 12, e1006449.
この論文では、ChIP-SeqおよびRNA-Seqを用いて、メトホルミンに対する肝臓の反応に関与するヒト肝細胞内の遺伝子および調節エレメントを同定しています。ChIP-Seqライブラリーは、ThruPLEX DNA-Seq Kitを用いて調製しました。この論文では、ヒト肝細胞におけるメトホルミン依存性反応のゲノムワイドな包括的知見が報告され、2型糖尿病の治療標的候補が同定されました。
- PDX1 dynamically regulates pancreatic ductal adenocarcinoma initiation and maintenance.
Roy, N. et al. Genes Dev. (2016) 30, 2669-83.
この研究では、膵管腺癌(PDA)の各ステージにおけるPDX1の多様な機能を明らかにするため、ChIP-Seq、RNA-Seq、およびBrU-Seqを行っています。PDX1と免疫沈降したDNAから、ThruPLEX DNA-Seq Kitを用いてChIP-Seqライブラリーを調製しました。著者らは、PDAの各ステージでPDX1が異なる役割を果たすことを報告し、PDX1を標的候補とする治療アプローチでは、PDX1の機能が発癌の各ステージで変化することを考慮する必要性を示唆しています。
- Loss of Pcgf5 affects global H2A monoubiquitination but not the function of hematopoietic stem and progenitor cells.
Si, S. et al. PLOS One (2016) 11, e0154561.
この論文では、ChIP-SeqおよびRNA-Seqを用いて、造血幹細胞および前駆細胞(HSPC)におけるPolycombグループ(PcG)RINGフィンガータンパク質Pcgf5の役割を解析しています。ChIP-SeqのライブラリーはThruPLEX DNA-Seq Kitを用いて調製しました。ChIP-Seq解析により、pcgf5欠損HSPCでH2AK119ub1レベルの低下が確認されましたが、遺伝子発現レベルとの有意な関連はみられませんでした。著者らは、Pcgf5がin vivoでヒストンH2AK119のモノユビキチン化を調節するが、造血における役割はわずかであると結論付けました。
- PI3K/AKT signaling regulates H3K4 methylation in breast cancer.
Spangle, J. M. et al. Cell Rep. (2016) 15, 1-13.
この研究ではChIP-SeqおよびRNA-Seqを用いて、乳癌の非臨床モデルにおけるPI3K/AKT経路活性化の役割を調べました。H3K4me3およびKDM5Aの細胞内局在を測定するため、ThruPLEX DNA-Seq Kitを用いてChIP-Seqライブラリーを調製しました。著者らは、乳房悪性腫瘍のエピジェネティックランドスケープの調節におけるPI3K/AKTシグナル伝達経路の重要性、より具体的には、AKT/KDM5A複合体により調節される細胞周期遺伝子の発現が、進行期乳癌との関連を示すことを明らかにしました。
- FOXA1, GATA3 and PPARγ cooperate to drive luminal subtype in bladder cancer: A molecular analysis of established human cell lines.
Warrick, J. I. et al. Sci. Reps. (2016) 6, 38531.
この研究では膀胱癌における分子サブタイプの研究に適する一連のヒト細胞株を同定するため、ChIP-SeqおよびRNA-Seqを用いています。ChIP-SeqライブラリーはThruPLEX DNA-Seq Kitを用いて調製しました。この研究は、PPARγ、GATA3およびFOXA1の過剰発現が、膀胱癌細胞の侵襲性の高いbasal型から侵襲性の低いluminal型への分化転換に関与することを示しています。
- Differential regulation of mouse and human nephron progenitors by the Six family of transcriptional regulators.
O'Brien, L.L. et al. Development (2016) 143, 595-608.
ChIP-SeqとRNA-Seqを用いて新生仔期のマウスおよびヒト腎臓前駆細胞における転写因子Six1とSix2の調節作用を比較しました。ThruPLEX DNA-Seq Kitを用いて、マウスおよびヒトChIP DNAからシーケンスライブラリーを作製しました。この研究は、ヒトおよびマウスのネフロン前駆細胞間での6個の因子の異なる調節の存在を実証し、ヒト腎臓前駆細胞の自己再生の延長期間と腎臓形成の機構的な関連性について報告しています。
CUT&RUN-Seq
- Staged developmental mapping and X chromosome transcriptional dynamics during mouse spermatogenesis.
Ernst, C. et al. Nat. Commun. (2019) 10, 1251.
この研究では、CUT&RUN-Seqを用いて、X染色体のエピジェネティック制御を調べました。転写サイレンシング後のX染色体の不活性化と再活性化に注目して、減数分裂後の精子細胞におけるX染色体再活性化のエピジェネティック制御について報告しています。ThruPLEX DNA-Seq Kitのプロトコールにいくつかの改変を行い、シーケンスライブラリーを作製しました。
- A high-content RNAi screen reveals multiple roles for long noncoding RNAs in cell division.
Stojic, L. et al. bioRxiv (2019) 709030. doi: https://doi.org/10.1101/709030
この研究の目的は、HeLa細胞の2,231個のlncRNAを欠如するRNAiハイコンテントスクリーニング法を使用して、細胞分裂におけるlncRNAの役割を発見および解明することです。CUT&RUN法を使用して転写因子だけではなく、活性化と抑制的なヒストン修飾のゲノムワイドプロファイリングを、選択したncRNAを用いて行いました。クロマチン上のlncRNA結合部位は、ターゲットRNAを用いたハイブリキャプチャー法とシーケンスを用いて同定されました(CHART-Seq)。この研究では、CUT&RUN-SeqおよびCHART-Seqのライブラリー作製にThruPLEX DNA-Seq Kitを使用しています。
FFPE
- Multiple components of PKA and TGF-β pathways are mutated in pseudomyxoma peritonei.
L. Saarinen, et al. PLoS One (2017) 12, 1-16.
PKAおよびTGF-β経路の複数遺伝子のexomeシーケンスによる腹膜偽粘液腫における突然変異の解析
使用キット:ThruPLEX DNA-Seq Kit
- Shallow whole genome sequencing for robust copy number profiling of formalin- fixed paraffin-embedded breast cancers.
S.-F. Chin et al. bioRxiv Prepr. (2017) doi: http://dx.doi.org/10.1101/231480.
乳癌のホルマリン固定パラフィン包埋組織をサンプルとした全ゲノム塩基配列解析による正確なコピー数プロファイリング
使用キット:ThruPLEX DNA-Seq Kit
- Digital PCR Improves Mutation Analysis in Pancreas Fine Needle Aspiration Biopsy Specimens.
Sho, S. et al. PLoS One (2017) 12, e0170897.
この論文では、穿刺吸引法(FNA)により採取した膵臓サンプル中のKRAS遺伝子異常を、デジタルPCR(dPCR)を用いて解析しました。レーザーマイクロダイセクションによってシングルセルを単離し、変異検出に最低限必要な腫瘍細胞数を評価しました。最初に、レーザーマイクロダイセクションによって単離したFFPE組織からDNAを抽出後、PicoPLEX WGA Kitを用いて全ゲノムを増幅しました。KRAS遺伝子変異のdPCR解析で得られた結果を確認するため、サンガー法によって増幅DNAのシーケンス解析を行いました。
- Vasculogenic mimicry in small cell lung cancer.
Williamson, S. C. et al. Nat. Commun. (2016) 7, 13322.
この研究では、シングルセルゲノム解析を用いて、小細胞肺癌(SCLC)由来の循環腫瘍細胞(CTC)の特性を解析するとともに、血管擬態(VM)、すなわち腫瘍細胞が血管内皮様構造を形成する傾向、の役割を調べています。CTC患者由来移植片モデル(CTC patient-derived explants(CDX))の高VMおよび低VM腫瘍領域のコピー数異常(CNA)を解析するため、組織切片のVM分布状況を染色し、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)によって細胞を採取しました。PicoPLEX WGA Kitを用いてDNAを抽出し全ゲノムを増幅した後、NGS用ライブラリーを調製し、イルミナ社MiSeqを用いたシーケンス解析によりコピー数異常を検出しました。
- A common founding clone with TP53 and PTEN mutations gives rise to a concurrent germ cell tumor and acute megakaryoblastic leukemia. Cold Spring Harb.
Lu, C. et al. Mol. case Stud. (2016) 2, a000687.
この研究では、縦隔胚細胞腫瘍(GCT)と急性骨髄性白血病(AML)の併発患者のゲノム解析を実施し、この2つの癌の間のクローン関連性を評価しています。GCTサンプルについては、縦隔切開生検のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロックからレーザーキャプチャーマイクロダイセクションによって腫瘍を採取し、gDNAを抽出しました。AMLサンプルについては、診断目的の骨髄生検中に凍結保存した細胞からセルソーティングにより巨核芽球を分取し、gDNAを抽出しました。エキソームキャプチャーハイブリダイゼーションに十分な量のDNAを得るために、PicoPLEX WGA Kitを用いてGCT gDNA(2 ng)およびAML gDNA(8 ng)から全ゲノム増幅を行いました。バリアントのコールのために全エキソームシーケンスを実施し、サンガー法のシーケンスによって推定されるコールを検証しました。
- Androgen Receptor Gene Aberrations in Circulating Cell-Free DNA: Biomarkers of Therapeutic Resistance in Castration-Resistant Prostate Cancer.
Azad, A. A. et al. Clin. Cancer Res. (2015) 21, 2315-24.
この論文では、転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)患者を対象として、血中セルフリーDNA(cfDNA)中で検出可能なアンドロゲン受容体(AR)遺伝子異常が、アビラテロン酢酸エステルおよびエンザルタミドに対する抵抗性に関連するかどうかを調べています。cfDNAのデータと、同じ患者の転移巣から採取した生検サンプルのデータを比較しました。レーザーキャプチャーマイクロダイセクションによって各生検サンプルから約50個の細胞を単離し、PicoPLEX WGA Kitを用いて全ゲノム増幅を行いました。増幅後のサンプルは、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)によって解析し、コピー数異常を検出しました。
cfDNA
-
Cell-free DNA Comprises an in Vivo Nucleosome Footprint that Informs Its Tissues-Of-Origin.
M. W. Snyder, et al. Cell (2016) 164, 57-68.
in vivoヌクレオソームフットプリントにより得られた血漿由来cfDNAがその由来組織情報を含むことの研究
使用キット:ThruPLEX DNA-Seq Kit
- Cell-free DNA and next-generation sequencing in the service of personalized medicine for lung cancer.
Bennett, C. W. et al. Oncotarget (2016) 7, 71013-71035.
この総説では、肺癌で高頻度にみられる2つの変異遺伝子(EGFRおよびMET)の研究における、リキッドバイオプシーとしてのセルフリーDNAの役割と、解析ツールとしての次世代シーケンス(NGS)の役割を分析しています。
使用キット:ThruPLEX Plasma-Seq Kit
- Next Generation-Targeted Amplicon Sequencing (NG-TAS): An optimised protocol and computational pipeline for cost-effective profiling of circulating tumour DNA.
Gao, M. et al. Genome Med. (2019) 11:1.
この研究では、低インプット量の循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いて、複数の遺伝子のプロファイルを同時に解析するための迅速、柔軟かつ費用対効果に優れた方法を報告しています。NG-TASは、cfDNAに含まれる変異を確実に検出でき、転移癌のモニターに適しています。臨床血漿サンプルでは、ctDNAの量により研究が制限されることが多いですが、この研究では、ThruPLEX Plasma-Seq Kitを用いて、3 ngという微量のcfDNAから、cfDNAの全ゲノムライブラリーを作製することに成功しました。
- High Throughput Preparation of High Quality Sequence-Ready Libraries from Cell-Free DNA (cfDNA)
Horvath, D., Jerome, J. P. & Popkie, A.
このアプリケーションでは、Biomek FXP Automated Workstation(Beckman Coulter社)でのThruPLEX Plasma-Seq Kitを用いた自動サンプル調製のワークフローを報告しています。このプロトコールにより、1回のランで0.1~10 ngのインプット量のcfDNAから最大96個のIlluminaライブラリーを3時間以内に調製できることが確認されました。シーケンス解析の結果は、自動プロトコールが高い精度および再現性を示し、手動で調製したライブラリーと同程度の高品質のシーケンスメトリクスが得られるとともに、GCバイアスが低く、ウェル間に交差汚染が生じないことを示しています。
- Noninvasive whole-genome sequencing of a human fetus. Sci.
Kitzman, J. O. et al. Transl. Med. (2012) 4, 137ra76.
この研究では、妊娠18.5週のヒト胎児のゲノム配列を非侵襲的に決定するため、両親のゲノムのシーケンス解析、母親の全ゲノムハプロタイピング、および母親血漿の読み取り深度の深いシーケンス解析を併用しました。ThruPLEX Plasma-Seq Kitを用いて母親血漿のライブラリーを調製したところ、シーケンス解析データから、遺伝的に受け継がれる胎児ゲノムの相補配列を高い精度で決定できました。
- Cell-free DNA profiling of metastatic prostate cancer reveals microsatellite instability, structural rearrangements and clonal hematopoiesis.
Mayrhofer, M. et al. Genome Med. (2018) 10, 85-98.
この研究は、セルフリーDNAが癌の診断、予後予測、およびマーカー特定に実用可能であることを示しています。血漿サンプル中のセルフリーDNAの使用は、組織生検の採取と比較して侵襲性が大幅に低く、癌の進行状況の確認での実用性がより高い手法として極めて有望です。著者らは読み取り深度の浅い全ゲノムシーケンス解析を実施したほか、特定領域を深い読み取り深度で解析するため、ターゲット濃縮を行いました。これらの研究にインプットDNA量として0.1~50 ngのセルフリーDNAを使用しました。
使用キット:ThruPLEX Plasma-Seq Kit
- Detection of cell free DNA fragmentation and copy number alterations in cerebrospinal fluid from glioma patients.
Mouliere, F. et al. EMBO (2018) 10, e9323.
この記事ではシーケンス解析のコストという重要な問題の解決に役立つアッセイ法を報告しています。コピー数多型およびDNA断片化の解析に必要な読み取り深度は、突然変異の解析に必要な深度と比較して大幅に低いものです。著者らは、低コストのスクリーニングを実施し、候補サンプルを確実に検出した後、疾患を有する可能性が高い患者のみを対象として、読み取り深度およびコストがより高いシーケンス解析による追加検査を実施することができました。このアプローチは、他の疾患や他の種類の癌にも応用できる可能性があります。
使用キット:ThruPLEX Plasma-Seq Kit
- Selecting Short DNA Fragments In Plasma Improves Detection Of Circulating Tumour DNA.
Mouliere, F. et al. bioRxiv (2017) 134437.
この記事では再発性かつ高悪性度の漿液性卵巣癌患者13例を対象として、化学療法の施行前および施行中に採取した血漿サンプル中のctDNAを、サイズセレクションによる濃縮が可能かを検討しました。ThruPLEX Plasma-Seq Kitを用いて、ターゲットおよび全ゲノムのシーケンス解析用のインデックス付きライブラリーを調製しました。解析前にDNA断片を90~150 bpでサイズ選択したところ、変異DNA断片が最大11倍濃縮され、非濃縮条件で検出されなかった有害なコピー数変化(MYC増幅など)を検出できました。
- Non-invasive analysis of acquired resistance to cancer therapy by sequencing of plasma DNA.
Murtaza, M. et al. Nature (2013) 497, 108-112.
この研究では、治療による転移癌のゲノム進化を追跡する目的で、進行癌(乳癌、卵巣癌および肺癌)患者6例を対象として、連続採取した血漿サンプルに含まれる癌細胞のエクソームシーケンス解析を実施しました。これらの血漿サンプルから、ThruPLEX Plasma-Seq Kitを用いて、インデックス付きのシーケンス解析用ライブラリーを調製しました。これらの症例のうち2例で実施された同時生検により、血漿中の腫瘍細胞ゲノムのゲノムワイドな表現が確認されました。変異アレル頻度の上昇に伴って治療抵抗性が出現したことから、循環腫瘍DNAの全エクソーム解析は、進行癌での薬剤抵抗性発現に関連する変異同定に現在使用されている侵襲的な生検を補完する方法として使用できることが実証されました。
- Association Of Plasma And Urinary Mutant DNA With Clinical Outcomes In Muscle Invasive Bladder Cancer.
Patel, K. M. et al. Sci. Rep. (2017) 7, 5554.
著者らは、ネオアジュバント化学療法(NAC)を施行中の筋層浸潤膀胱癌患者17例のリキッドバイオプシー(血漿、尿沈渣中の細胞ペレットおよび上清など)248サンプルを採取しました。10 ngのインプット量でThruPLEX Plasma-Seq Kitを用いてライブラリーを調製し、タグを含むアンプリコンシーケンスおよび読み取り深度の浅い全ゲノムシーケンス解析を用いて、体液中の変異DNA(mutDNA)の一塩基変異およびコピー数変化を評価しました。mutDNAの縦断的解析では、NACによる選択圧下で腫瘍が進化すること、また、NAC施行中にmutDNAが持続的に検出されることは癌再発の予測因子であることが示され、このことから、mutDNAが化学療法の効果の早期バイオマーカーとして有望であることが浮き彫りになりました。
- The influence of SNP-based chromosomal microarray and NIPT on the diagnostic yield in 10,000 fetuses with and without fetal ultrasound anomalies.
Srebniak, M. I. et al. Hum. Mutat. (2017) 38, 880-888.
この研究ではSNPアレイ解析および非侵襲性出生前検査(NIPT)が診断率および侵襲性検査件数に与える影響が、Erasmus 大學医療センターロッテルダムの臨床遺伝学科で評価されました。2009~2015年に出生前検査に紹介された10,005症例を対象として、胎児の病的な不均衡型染色体異常の頻度を評価しました。SNPマイクロアレイ解析と、ThruPLEX Plasma-Seq Kitを用いてサンプルあたり1 ngのcfDNAからシーケンス用ライブラリー調製を導入した結果、超顕微鏡的な病的染色体異常の検出率が、超音波異常がみられる胎児で3.6%上昇し、超音波異常がみられない胎児で1.9%上昇しました。
- Circulating tumor DNA as a liquid biopsy target for detection of pancreatic cancer.
Takai, E. & Yachida, S. World J. Gastroenterol. (2016) 22, 8480-8488.
この総説では、血液を用いた膵癌診断検査の現状と、プレシジョン・メディシンとしてctDNAが有用である可能性について概説しています。ctDNAベースのリキッドバイオプシーを膵癌の早期診断法として実用化するためには、対処すべき課題が残されているものの、標準化されたctDNA解析方法の確立には、ThruPLEX Plasma-Seq Kitを含む新たなテクノロジーが利用可能であり評価する価値があります。
- Patient monitoring through liquid biopsies using circulating tumor DNA.
Ulz, P., Heitzer, E., Geigl, J. B. & Speicher, M. R. Int. J. Cancer (2017) 141, 887-896.
この総説では、体細胞腫瘍特異的な変異のアレル頻度と、血漿DNA中の腫瘍由来DNAの割合の間の関係を論じており、現在の腫瘍進化モデルが、リキッドバイオプシーを用いた縦断的研究の結果とどの程度相関するかを検討するとともに、血漿DNA中のアレル頻度が極めて低い変異を検出することの重要性を示しています。
使用キット:ThruPLEX Plasma-Seq Kit
血中循環腫瘍細胞(CTC)のゲノム解析
- Tumourigenic non-small-cell lung cancer mesenchymal circulating tumour cells: a clinical case study.
Morrow, C. J. et al. Ann. Oncol. (2016) 27, 1155-1160.
この論文では、進行期の転移性非小細胞肺癌(NSCLC)患者から採取した循環腫瘍細胞(CTC)を用いて、patient CTC-derived explant(CDX)モデルを作製しています。CTCを濃縮し免疫不全マウスに移植した後、形成された腫瘍をドナー患者の診断用標本と、形態学的、免疫組織化学的、遺伝学的に比較しました。CDXモデルの腫瘍について、全エキソームシーケンス解析を実施しました。PACRG遺伝子内のG340A変異を検証するため、濃縮フィルターからレーザーキャプチャーマイクロダイセクションにてCTCを回収した後、DNAを抽出し、PicoPLEX WGA Kitを用いて全ゲノムを増幅し、最後に、遺伝子座特異的プライマーを用いて、サンガー法によるシーケンスを行いました。
- High-Resolution Genomic Profiling of Disseminated Tumor Cells in Prostate Cancer.
Wu, Y. et al. J. Mol. Diagnostics (2016) 18, 131-143.
この研究では2~40個の細胞サンプル中のゲノムコピー数変化を高い再現性で検出するために最適化された頑健な手法を報告しています。骨髄穿刺液から播種性腫瘍細胞(DTC)を分離し、PicoPLEX WGA Kitを用いて全ゲノムを増幅しました。その後、高解像度一塩基多型(SNP)アレイプラットフォームおよび精密な計算アルゴリズムを用いて、増幅後のサンプルを解析しました。生物学的な洞察を得るために、同じ患者から分離したDTCと転移腫瘍巣におけるコピー数変化を比較しました。
- An improved CTC isolation scheme for pairing with downstream genomics: Demonstrating clinical utility in metastatic prostate, lung and pancreatic cancer.
Premasekharan, G. et al. Cancer Lett. (2016) 380, 144-52.
この研究では、癌患者から採取した末梢血から、浸潤性を示すCTCを回収し解析するために、セルソーティングと細胞接着アッセイ(adhesion matrix(CAM)assay)を組み合わせて使用しています。回収された細胞の全ゲノムをPicoPLEX WGA Kitにて増幅した後、比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)アレイによってコピー数のプロファイリングを行いました。
- Establishment and Characterization of a Cell Line from Human Circulating Colon Cancer Cells.
Cayrefourcq, L. et al. Cancer Res. (2015) 75, 892-901.
この論文では、結腸癌患者由来のCTCから細胞培養および永久細胞株を樹立し、ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオミクスおよびセクレトームレベルで細胞の特性を明らかにしました。ゲノム解析については、次世代シーケンス解析によってコピー数多型のプロファイルを調べました。PicoPLEX WGA Kitを用いて、シングルセルまたはスフェアの全ゲノムを増幅後、ライブラリーを構築し、HiSeq 2500装置を用いてシーケンスを解析しました。
全ゲノム増幅と染色体異数性スクリーニング
- Microarray-CGH for the Assessment of Aneuploidy in Human Polar Bodies and Oocytes.
Jaroudi, S. & Wells, D. In: Mammalian Oocyte Regulation, 267-283 (Humana Press, Totowa, NJ, 2013). doi:10.1007/978-1-62703-191-2_19
この論文は、全ゲノム増幅およびマイクロアレイテクノロジーにおける最近の技術革新が、ヒト卵母細胞および極体から単離したシングルセルに含まれる全染色体のコピー数の高精度解析の手段として利用されている状況を報告しています。
使用キット:PicoPLEX WGA Kit
- Identification of chromosomal errors in human preimplantation embryos with oligonucleotide DNA microarray.
Liang, L. et al. PLoS One (2013) 8, e61838.
ヒト胚の着床前遺伝子スクリーニングでの正確な異数性スクリーニングに、NimbleGen社のオリゴヌクレオチドマイクロアレイプラットフォームを使用できるか否かを検討しています。母体年齢が高いか流産歴のあるドナー由来の胚盤胞の染色体異常解析に、オリゴマイクロアレイプラットフォームおよびPicoPLEX WGA Kitによる全ゲノム増幅を使用し、従来のFISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)法と比較しています。コピー数多型(CNV)や軽微な異常を含む染色体異常を有する胚盤胞の58.1%の変異率が、DNAマイクロアレイ法を使用して高い感度および再現性で検出されました。
マイクロバイオーム解析(DNA)
- Metagenome-assembled genomes uncover a global brackish microbiome.
Hugerth, L. W. et al. Genome Biol. (2015) 16, 279.
著者らは、バルト海から時系列的に回収したメタゲノムから多くの細菌プランクトンのゲノムを再構築しました。エーランド島(スウェーデン)の沖合10 kmに位置するLMOにて、水深2 mの水サンプルを、Ruttner式採水器を用いて、2012年3月から12月に37回採取しました。全サンプルは、採取日を文字と図(年月日形式)で識別し、3.0 μmおよび0.22 μm孔径のフィルターで連続ろ過しました。0.22 μm分画をDNA抽出に使用しました。DNA抽出、植物プランクトンのカウント、およびクロロフィルなどの栄養素の測定手順を報告しています。ThruPLEX DNA-Seq Kitを説明書に従って使用し、各サンプルからDNA(2~10 ng)を調製しました。精製には、MyOneカルボン酸コーティング超常磁性ビーズ(Invitrogen)を使用しました。最終ライブラリーを、SciLifeLab/NGI(ソールナ、スウェーデン)にてIllumina HiSeq 2500によるシーケンス解析を行いました。2×100 bpペアエンドによるリード数は平均で3,190万リードでした。
- Antimicrobial resistance in selected environments in Norway: occurrence of antimicrobial resistant bacteria (ARB) and antimicrobial resistant genes (ARG) associated with wastewater treatment plants (WWTPs). Katrine, J. (2017). www.genok.no
著者らは、ノルウェーの2地点の排水処理施設で、培養ベースの方法に分子的手法およびメタゲノム解析を組み合わせて、抗菌剤耐性菌および抗菌剤耐性遺伝子の存在状況を調査しました。著者らの目的は、環境中の抗菌剤耐性(AMR)とAMRの拡大(臨床現場から環境への拡大と、環境からヒトおよび動物の病原体への拡大)の間の関係の特定についての理解を深めることでした。サンプルは-20℃で直ちに凍結させ、DNA抽出まで凍結保存しました。DNAサンプルをOslo大学のNorwegian Sequencing Centre(NSC)に送り、ThruPLEX DNA-Seq Kitを用いたメタゲノムライブラリー調製と、Illumina MiSeq PE300プラットフォームを用いたシーケンス解析を行いました。
- Potential for hydrogen-oxidizing chemolithoautotrophic and diazotrophic populations to initiate biofilm formation in oligotrophic, deep terrestrial subsurface waters.
Wu, X. et al. Microbiome (2017) 5, 37.
この研究では、フローセルを流入源、および光が生命活動に利用されている地表からの深さが異なる地下水(新しい海水または古い塩水)が存在する掘削孔に設置しました。著者らは、16S rRNA遺伝子のシーケンス解析を用いて、プランクトン集団および付着集団が採取場所により異なっていたこと、また、メタゲノムの遺伝子頻度から、2つの帯水層では、水素消費集団、二酸化炭素固定集団および窒素固定集団がバイオフィルム形成に関与すると推察されることを示しました。ガーネット粒から抽出されたDNAのメタゲノムライブラリーは、ThruPLEX DNA-Seq Kitおよび96種類デュアルインデックスを用いて調製しています。
テクノロジー比較
- The comparison of the performance of four whole genome amplification kits on ion proton platform in copy number variation detection.
Zhang, X. _et al. Biosci. Rep. (2017) 37, BSR20170252.
この論文では、市販の4種類の全ゲノム増幅(WGA)キット(PicoPLEX WGA Kit、GenomePlex Single Cell Whole Genome Amplification Kit、MALBAC Single Cell Whole Genome Amplification Kit、REPLI-g Single Cell Kit)についてコピー数多型(CNV)検出の性能を比較しています。核型が異なる6種類の細胞株を使用し、1個、または3~5個の細胞、および精製したgDNA 15pgをサンプルとしてWGA反応に用いました。それぞれ次世代シーケンス(NGS)用ライブラリーを構築し、Ion Protonプラットフォームを用いたシーケンス解析をしました。この研究は、「PicoPLEXが、シーケンス解析データの質、読み取り深度の均一性、増幅の再現性および正確性に関して最も高い性能を示し」、「Ion Protonプラットフォームを用いたCNV検出には[PicoPLEX]が推奨される」と結論付けました。
- Comparative study of whole genome amplification and next generation sequencing performance of single cancer cells.
Babayan, A. et al. Oncotarget (2017) 8, 56066-56080.
この論文では、市販の3種類の全ゲノム増幅(WGA)技術、PicoPLEX WGA Kit、REPLI-g Single Cell Kit、およびAmpli1 WGA Kitの性能を比較しています。EDTA保存血液、またはCellSaveチューブ保存血液にスパイクして得られたシングル、またはプールドの腫瘍細胞(SK-BR-3)、および保存材料(FFPE)から得られた細胞(SK-BR-3)を用い、全ゲノム増幅を行いました。増幅されたDNAは、エキソームをキャプチャー後、Illumina HiSeq 2000およびThermo Fisher Ion Protonプラットフォームの両方を用いてシーケンスを解析しました。この研究は、PicoPLEX WGA Kitによって得られたコピー数異常(CNA)プロファイルが最も正確で、「非増幅DNAに最も近い結果であった」と結論付けました。
その他
- Genome sequencing of a single tardigrade Hypsibius dujardini individual.
K. Arakawa et al., Sci. Data. (2016) 3, 160063.
緩歩動物、クマムシの単一個体由来の超微量ゲノムDNAを用いたゲノムシーケンス解析手法の確立および再現性と網羅性に優れた解析
使用キット:ThruPLEX DNA-Seq Kit
※各文献の日本語要約は簡潔さを優先しております。ご利用の際には必ず原著論文をご確認ください。