TaqStart Antibodyを利用すれば、抗体を利用したホットスタート法によりPCRの反応特異性と感度の向上を実現できる(1)。加熱サイクルを始めるまでは、抗
Taq抗体によってポリメラーゼ活性が阻害されているので、非特異的な増幅とプライマーダイマーの形成が抑えられている。温度を上げると抗体は即座に失活して、PCR反応が進行する。
TaqStart Antibodyは他のホットスタート法よりも使いやすく、以下のように多くの特長を持っている。
・化学修飾タイプのホットスタート酵素で必要な10~15分の高温での活性化処理が不要なため、サンプルのダメージを避けることができる(2)。
・加熱後にチューブの開閉が不要なため、クロスコンタミネーションのリスクが抑えられる。
・ハイスループットなPCR、
in situ PCR、マイクロプレート法、キャピラリーPCR、オイルフリー法など、他のホットスタート法の適用が困難なPCRでも、本抗体なら使用可能である。
・非特異的PCR産物が問題となる場合、例えば標的配列のコピー数が少ない場合や、多様なDNAによるバックグラウンド、混合プライマーを使用する場合などでも、より効果的な結果が得られる。
TaqStart Antibodyは、あらゆる
Taq DNAポリメラーゼ(天然型、組み換え型、N末端欠失変異型の
Taqなど)に効果があり、Titanium
Taq DNA PolymeraseやAdvantage製品に含まれている。
図1. TaqStart Antibodyは加熱サイクル開始前のポリメラーゼ活性をブロック
図2. TaqStart Antibodyを用いたホットスタートPCRによる特異性の向上
パネルA:TaqStart Antibodyを含むTitanium Taq(製品タイプ)とTaqStart Antibody含まないTitanium Taqを用い、一本鎖φX174 Virus DNA(NEB社)を鋳型とした37℃、5時間の等温伸長反応を行った。TaqStart Antibodyは、DNA合成を確実に阻害する。
パネルB:ヒト胎盤由来ゲノムDNAとQUICK-Clone cDNAの混合物を鋳型として、ヒトトランスフェリンレセプター(TFR)の1.3 kbを増幅しました。TaqStart Antibodyを含むTitanium Taq(レーン1)とTaqStart Antibody含まないTitanium Taq(レーン2)を用い、[94℃ 45秒/60℃ 45秒/72℃ 2分;35サイクル→72℃ 7分]の条件で反応を行った。TaqStart Antibodyによる著しい反応特異性の向上が確認できた。