多能性幹細胞から肝細胞への分化状態モニタリング

ヒトiPS細胞などの多能性幹細胞から分化・誘導過程を経て作製した肝細胞は、細胞移植治療や医薬品の毒性評価などへの利用が期待されており、均一で高機能の肝細胞を効率的に大量製造できる分化誘導方法の研究が大きな注目を集めている。タカラバイオでは、こうしたiPS細胞など多能性幹細胞を用いた肝細胞分化誘導法の研究に有用な分化モニタリングツールを用意している。

分化マーカー発現解析による肝分化モニタリング

  1. リアルタイムRT-PCRによるmRNA発現解析
    多能性幹細胞から肝細胞への分化は、図1に示すような多段階の分化過程を経て行われることが知られている。したがって、これら各分化段階に特徴的に発現するマーカー遺伝子の発現レベルをリアルタイムRT-PCRで解析することにより、肝分化のおおよその状態をモニタリングすることが可能となる。PrimerArray Hepatic Differentiation (Human)(終売)には、これら各分化段階で発現することが知られている代表的な遺伝子マーカーの発現レベルをリアルタイムRT-PCRにより解析するために必要なプライマーが搭載されている。また、これら遺伝子マーカーと併せてハウスキーピング遺伝子検出用プライマーも搭載されているため、相対定量法により、多能性幹細胞から肝細胞への分化・誘導過程を1枚のArrayで簡単にモニタリングすることが可能である。
    多能性幹細胞からの肝分化の流れとPrimerArray Hepatic Differentiation (Human)搭載プライマーの分類
    図1. 多能性幹細胞からの肝分化の流れとPrimerArray Hepatic Differentiation (Human)搭載プライマーの分類

    PrimerArray Hepatic Differentiation (Human)による解析例
    図2. PrimerArray Hepatic Differentiation (Human)による解析例
    [方法] ヒトiPS細胞(201B7株)、ヒト成人肝臓組織、およびヒト胎児肝臓組織由来のtotal RNA からPrimeScript RT Master Mix (Perfect Real Time)(製品コード RR036A)を用いて調製したcDNAを鋳型に、本製品とTB Green Premix Ex Taq II (Tli RNaseH Plus)(製品コード RR820A)を用いたリアルタイムPCR を実施した。各遺伝子の発現変動をPrimerArray Analysis Tool for Hepatic Differentiationを用いて解析した。
    [結果] iPS細胞では、成人肝臓組織に対してPluripotent/ESマーカーが高発現であるのに対し、Hepaticマーカーの多くが低発現状態にあることが確認された(A)。また、胎児肝臓組織については、成人肝臓組織に対してEarly hepaticマーカーが高発現であるのに対し、創薬研究対象として重要なCYP Enzyme、Transporterなどの一部のHepaticマーカーが低発現状態にあることが確認された(B)。
  2. 抗体、ELISAによるタンパク発現解析
    アルブミン(ALB)は初期~成熟肝細胞分化マーカとして知られており、肝分化の進行とともに細胞外に分泌される。従って、分化過程において培地中に分泌されたALBのタンパク量を測定することで、分化細胞を維持したまま肝分化の状態をモニタリングすることが可能である。Human Albumin EIA Kit(製品コード MK132)では、ウシ抗原への交差がないためウシ胎児血清の有無に関係なく培地中のALB量を測定でき、細胞分化初期の低レベル量の分泌も培養上清からダイレクトに検出することが可能である。


    Human Albumin EIA Kitによる解析例
    図3. Human Albumin EIA Kitによる解析例
    [方法] 未分化細胞の肝分化過程で上清中に分泌されたヒトALB量を測定した。
    [結果] 肝分化の過程で培養上清へのALBの分泌が認められた。
    グラフ中、横軸は培養期間、縦軸は各培養期間中1日当たりに培養液1 ml中に産生されたALBの総量(ng)を表す。

ミトコンドリアDNAコピー数の変動によるモニタリング

Human Mitochondrial DNA (mtDNA) Monitoring Primer Set(製品コード 7246)は、リアルタイムPCRを利用してヒトのミトコンドリアDNA(mtDNA)コピー数を核DNA(nDNA)を基準として相対的に測定するためのプライマーセットである。iPS細胞等の多能性幹細胞から肝細胞方向への分化・誘導過程で増加することが報告されているmtDNAコピー数のモニタリングにも有用である。


図4.Human Mitochondrial DNA (mtDNA) Monitoring Primer Setによる解析例
[方法]iPS細胞2株および肝臓組織より調製したゲノムDNA(mtDNA含)を鋳型とし、mtDNAコピー数の検出を行った。
[結果]肝細胞が大部分を占める肝臓組織において、明らかに高いmtDNAコピー数の増加を確認することができた。

製品ラインナップ

指標

製品名

ミトコンドリアDNA

Human Mitochondrial DNA (mtDNA) Monitoring Primer Set(製品コード 7246)

肝細胞分化時に発現変動のある88種類の遺伝子

PrimerArray Hepatic Differentiation (Human)(終売)

肝細胞分化の初期段階の指標であるαフェトプロテイン

Anti-Human Alpha Fetoprotein, Monoclonal(製品コード M225)

肝細胞分化の成熟過程の指標であるヒトアルブミンタンパク質

Human Albumin EIA Kit(製品コード MK132)
Anti-Human Albumin, Monoclonal (Clone 3-7A)(製品コード M226)

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