CRISPR/Cas9でのノックインはドナーDNAを作製し、主にCas9-sgRNA複合体もしくはCas9-sgRNA発現ベクターと共に導入することで起こる。
ドナーDNAとして二本鎖DNA(dsDNA)よりも一本鎖DNA(ssDNA)を使用したほうが、ランダムインテグレーションが起きにくく、細胞毒性が低いなど多くの利点があることが近年示されているが、長鎖のssDNAは作製が難しいため使用が制限されていた。
本製品は、CRISPR/Cas9のノックインドナーDNAとして使用できる、500 bases~5 kbまでの長鎖ssDNAを調製するためのシステムである。独自技術のStrandase処理により、PCR産物のセンス鎖またはアンチセンス鎖を選択的に分解することで、簡単な操作で最終的にセンス鎖もしくはアンチセンス鎖のssDNAが調製できる。
本製品にはssDNAを50回(センス鎖、アンチセンス鎖それぞれ25回)作製するために必要な試薬と、ssDNA精製用のNucleoSpin Gel and PCR Clean-upおよびバッファーが含まれている。
反応系の改良により、従来製品Guide-it Long ssDNA Production System(製品コード 632644:終売)よりもStrandase処理の効率がさらに改善されており、これまで困難だったターゲットからも、より効率的なssDNA調製が可能となっている。
まず、dsDNAテンプレートをクローニング、fusion PCR、または他の方法により調製する。テンプレートは目的遺伝子の他に、目的遺伝子を挿入する左右の隣接配列と相同のアームを含む必要がある。
次に、dsDNAテンプレートを片側のみリン酸化プライマーを使用してPCRを行い、異なる2種類のdsDNA産物を作製する(これらはそれぞれ、センス鎖ssDNA、アンチセンス鎖ssDNA作製のための鋳型となる)。
Strandase Mix Aを加えてセンス鎖もしくはアンチセンス鎖を分解する。Strandase Mix Aは5’がリン酸化された鎖だけを分解するので、センス鎖側またはアンチセンス鎖側を選択的に分解できる。次にStrandase Mix Bを加えて最終の分解を行い、ssDNAが得られる。
得られたssDNAをクリーンアップし、CRISPR/Cas9でのノックイン実験に使用する。
センス鎖、アンチセンス鎖両方のssDNAを調製し、それぞれ別々にノックイン実験を行うことを推奨する。
AAVSにあるターゲットサイトのホモロジーアーム(600 bp)を含んだEF1αプロモーターおよびAcGFP1を含むssDNAドナーを作製し、ノックイン実験を行った。
GFP陽性クローンを単離した後、挿入されたサイトの正確性を調べるためにシーケンスを行った。その結果、すべてのクローンで目的遺伝子が正しい位置に挿入され、つなぎ目に変異が入っていないことが確認できた。
従来製品Guide-it Long ssDNA Production System (v1)では高純度のssDNAの調製が困難だったいくつかのdsDNAテンプレート(#1~#5)について、本製品(v2)を使用してssDNAを調製し、電気泳動で比較した。
すべてのケースにおいて、本製品Guide-it Long ssDNA Production System v2では、従来製品に比べて目的外の産物の少ないクリアなssDNAのバンドが確認でき、より完全で均一な選択的分解ができていることが示唆された。
Panel A:GAPDHのexon 8領域にGAPDHとインフレームで融合するようにAcGFPを挿入するためのドナーssDNAテンプレートを本キットを使って作製した。
Panel B:HEK293細胞へ変異導入後のフローサイトメトリーの結果を示した。
直鎖状のdsDNAをドナーとして使用した場合は、Cas9とsgRNAの非存在下でも緑色の蛍光が観察された。一方センス、アンチセンス鎖のドナーssDNAテンプレートを使用した場合は、テンプレートがCas9とsgRNAが共に導入された場合のみ、蛍光が観察され、Cas9とsgRNA非存在下では、ほとんど蛍光は観察されなかった。
hiPSC18のtubulin領域にAcGFP1をノックインする実験を行った。
ノックインドナーをssDNA、もしくはdsDNAで用意し、Cas9+sgRNAと一緒にエレクトロポレーションで導入した。Cas9を加えない実験も同時に行った。
ドナーDNAは、インサートの両側に350 bの相同アームを持つ構造で長さは約1.5 kbである。
dsDNAドナーを用いた場合は、Cas9存在下・非存在下どちらにおいても顕著な毒性が見られた。
PrimeSTAR Max Premix (2X) | 625 μl×4 |
Strandase Mix A | 250 μl |
Strandase A/B Buffer (10X) | 250 μl |
Strandase Mix B | 50 μl |
Digestion Enhancer (5X) | 500 μl |
RNase Free Water | 1 ml×5 |
2-kb Control Template (2 ng/μl) | 50 μl |
Control Primer Mix (16 μM) | 50 μl |
Guide-it Long ssDNA Strandase Kit v2(製品コード 632667) | -20℃ |
NucleoSpin Gel and PCR Clean-Up(製品コード 740609.50) | 室温 |
Buffer NTC(製品コード 740654.100) | 室温 |
SaCas9を用いた組換えアデノ随伴ウイルスによるゲノム編集システム(ワンベクタータイプ)
プラスミドDNA用いるゲノム編集システム
オフターゲットを抑制し、in vivoでの効率的なゲノム編集が可能
ゲノム編集を強力に支えるサポートツール
組換えアデノ随伴ウイルスを用いるゲノム編集システム(ツーベクタータイプ)
in vitro transcriptionによるsgRNAの調製およびsgRNAの有効性の確認