製品説明
pSINsiベクターシリーズは、自己不活型レトロウイルスベクタープラスミドを基本骨格とし、RNA polymerase III (pol III) 系のプロモーターによりヘアピン型RNAを発現させるベクターである。pol III系のプロモーター(human H1、human U6、またはmouse U6)の下流のクローニングサイトにヘアピン型RNAを発現させるための合成オリゴDNA配列を挿入することによって、siRNA発現レトロウイルスベクタープラスミドが得られる。マーカー遺伝子としてはネオマイシン耐性遺伝子を搭載している。siRNA発現レトロウイルスベクタープラスミドから、Retrovirus Packaging Kit Eco/Ampho(製品コード 6160、6161)などを用いて、組換えレトロウイルスを調製することができる。
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制限酵素地図
pSINsiベクターシリーズではプロモーターの異なる3種のプラスミドベクターを用意している。
pSINsi-hH1 DNA: human H1 promoter (Accession S68670)を搭載。
pSINsi-hU6 DNA: human U6 promoter (Accession X07425)を搭載。
pSINsi-mU6 DNA: mouse U6 promoter (Accession X06980)を搭載。
pSINsiベクターの制限酵素地図
各ベクターのDNAシーケンスデータ
ZIP形式で圧縮しておりますが、StuffIt Expander等でも解凍できます。
【注意】シーケンス上では、1259の位置(プロモーター上流、Hind IIIとEcoR Iの間)にCla Iサイトがありますが、通常のdam+大腸菌で調製したプラスミドは、dam methylaseによる影響を受けるため、1259位置のCla Iサイトは切断されません。
原理
pSINsiベクターシリーズのレトロウイルスベクタープラスミドは3'LTR U3領域のプロモーター活性を欠損させている。そのため、逆転写後、染色体に組み込まれたプロウイルスの状態では5'LTRのプロモーター活性が消失し、プロウイルス由来のmRNAは転写されなくなっており、pol III系のプロモーターからのヘアピン型RNAとSV40プロモーターからのネオマイシン耐性遺伝子のみが転写される。
発現したヘアピン型RNAは細胞内のDicerによる分解を受けてsiRNAとなる(下図参照)。
ヘアピン型RNA発現ベクター
ヘアピン型RNAを発現させるためのDNA合成
ヘアピン型RNAを発現させるためには、[Ligation用の制限酵素サイト+標的配列(センス)+ループ配列+標的配列(アンチセンス)+ターミネーター配列+Ligation用の制限酵素サイト]の順でデザインした合成DNAをプロモーターの下流に挿入する。pSINsiベクターのクローニングサイトは、上流側は
BamH I、下流側は
Cla Iである。
下図に示すような合成オリゴDNAを作製する(Top strandとBottom strandの2本; N部分が標的配列)。U6プロモーターの転写開始点はプリン塩基(GまたはA)が好ましいため、標的配列がGまたはAで始まらない場合は標的配列の前にGまたはAを挿入する。
ここではループ配列の例としてCTGTGAAGCCACAGATGGG(Boden
et al. 参考文献 1)を挙げているが、GTGTGCTGTCC(Miyagishi
et al. 参考文献 2)も有用であることが確認されている。また、これ以外のヘアピンループとして、Lee
et al.(参考文献 3)、Paddison
et al. (参考文献 4)、Paul
et al.(参考文献 5)、Sui
et al. (参考文献 6)らによってそれぞれ異なった配列が報告されている。
ターミネーター配列には、TTTTTT配列を用いる(Tが4つ続くとpol III系プロモーターによる転写が止まる)。siRNA配列と用いるヘアピンループ配列の組み合わせによってはTが4つ以上続く可能性があるため、合成DNAをデザインした後には必ず、Top strandにTが4つ以上続いていないことを確認することが必要である。
siRNA発現用組換えレトロウイルス作製の概要
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