製品説明
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)は長期保存が可能なため、基礎研究に限らず臨床分野での生体試料保存法として広く普及しています。ただし、FFPEを製作する工程で使用するホルマリン(組織固定用)は、DNA断片化の原因の一つとされており、断片化レベルは一様ではありません。DNAの断片化はNGS解析時のデータの品質に大きく影響するため、FFPEサンプルの品質評価を事前に知ることはNGS解析の成功のポイントになります。
Takara FFPE DNA QC All-in-One KitはNGSライブラリー調製前に、リアルタイムPCR(qPCR)法によりFFPE由来DNAの定量と断片化評価を行うキットです。
本製品はヒトのハウスキーピング遺伝子上に長短2つのアンプリコン(PCR産物)用のプライマーを設計しており、それぞれのアンプリコン(Long Assay:268 bp、Short Assay:92 bp)のqPCR増幅効率からFFPEサンプル中のPCR増幅できる有効分子数の定量および断片化評価を行います。NGSライブラリー調製前にDNAの定量と断片化評価を行うことで下流のライブラリー調製に用いるDNAインプット量もしくは増幅サイクル数の目安を決定でき、ライブラリー調製の成功率向上が期待できます。
本製品はqPCR用Premix、Primer/Probe Mix(FAM)、検量線用DNA Standardなど、評価に必要な試薬が全て揃ったオールインワンキットです。
有効分子数の定量:
段階希釈したStandard DNAを用いてPCRを行い、得られたCt値をy軸に、Standard DNAのコピー数の対数値をx軸にプロットして検量線を作成します。この検量線をもとに、目的サンプルのShort Assayのアンプリコン増幅から有効分子数を定量します。
断片化評価:
断片化が進んだFFPE由来DNAはLong Assayアンプリコンの増幅が低下することから、Long/Shortアンプリコンの定量値の比率を以下の式で求め、FFPE由来DNAの断片化評価を行います。
Long/Short比=Long Assayの定量値/Short Assayの定量値
Long/Short比は0~1の範囲で評価され、断片化していないサンプルはLong/Short比の値が1.0となり、断片化が進むにつれてその値は小さくなります。
M:Marker
1:Whole_Genome
2:Frag_1
3:Frag_2
4:Frag_3
5:Frag_4
6:Frag_5
7:Frag_6
図1. 異なるサイズの断片化DNAサンプルを用いたqPCRデータによる品質評価
ソニケーターにより物理的にせん断したゲノムDNAの断片化度合いを、電気泳動により確認した(レーン:2~7)。断片化したDNAサンプルをテンプレートとして、Takara FFPE DNA QC All-in-One Kitを用いて断片化評価(Long/Short比)を行った。
Long/Short比は、断片化していないDNAでは1に近い値を示し、断片化度合いが大きくなるにしたがってサンプルの断片化度合いを反映した値を示す結果となった。
M:Marker
1:gDNA-HL60
2:Fresh-Frozen Liver
3:FFPE-Colon
4:FFPE-Adipose Tissue
5:FFPE-Lymph nodes
6:FFPE-Kidney
図2. FFPE由来DNAをテンプレートとした時のFFPE品質検定qPCR結果
5種類のFFPE由来DNAの断片化状態を電気泳動で評価し、Takara FFPE QC All-in-One Kitにより品質検定を行った(パネルA)。また、各DNAサンプルより得られたLong/Short比とDIN値をプロットした結果、 Long/Short比とDIN値に相関 (r)=0.99 を認めた(パネルB)。
図3. Takara FFPE QC All-in-One Kitで得られたデータをもとに増幅条件を変更しライブラリー収量を改善
本製品により得られたLong/Short比をもとに、 ThruPLEX Tag-Seq HV(ライブラリー調製キット:製品コード R400742)の通常プロトコール(Input量 10 ng、PCR Cycle 9~10 cycles)からInput量またはCycle数の条件変更プロトコールを示した(パネルA)。
Long/Short比の異なる3種類のFFPE由来DNA(0.30、0.10、0.04)を用いて、Input量またはCycle数の条件を変更したライブラリーを調製を行ったところ、シーケンスに十分な量のライブラリーが得られることを確認した(パネルB)。
図4. ThruPLEX Tag-Seq HVライブラリーのNGSシーケンス結果
ThruPLEX Tag-Seq HV Kitを使用して、Long/Short比の異なるDNA(0.30、0.02)から通常プロトコール、およびInput量またはCycle数を増加した推奨プロトコールでライブラリーを調製し、イルミナ社NextSeq 2000でシーケンスを行った。増幅の均一性を確認するため染色体ごとのカバレッジを評価したところ、Input量またはCycle数の変更によらずカバレッジは均一であった。Takara FFPE QC All-in-One Kitにより得られたLong/Short比をもとに、ThruPLEX Tag-Seq HV Kitの増幅条件を最適化することで安定したライブラリー収量を得ることが可能となり、Input量またはCycle数を変更した場合もNGS解析への影響は限定的であることが示唆された。
内容
*1 酵素、基質等を含みます。
*2 蛍光標識プローブを含んでいるため、遮光に留意してください。
*3 蛍光物質を含んでいるため、遮光に留意してください。
ウェル間の蛍光シグナルの補正を行う装置で解析する場合に必要です。
- ROX Reference Dye IIを添加する機種
- QuantStudio 5 Real-Time PCR System (96-well, 0.1または0.2 ml block) (Thermo Fisher Scientific社)
- 添加の必要がない機種
- Thermal Cycler Dice Real Time System IV(製品コード TP1000/TP1010/TP1030)
- Thermal Cycler Dice Real Time System III(製品コード TP950/TP970/TP980/TP990)
- CronoSTAR 96 Real-Time PCR System(製品コード 640231/640232)
- CFX96 Touch Deep Well Real-Time PCR Detection System(Bio-Rad社)
- LightCycler 96 System/LightCycler 480 System II(Roche Diagnostics社)
※本製品は検量線作成分も含めて100回分の試薬が入っています。N=2で実験を行う場合、評価可能サンプル数は最大42サンプルです。以下に96 well plateへの分注例を示します。
<Short AssayとLong Assayで96 well plateを1枚ずつ使用する場合>
※Long Assayも同様
<Short AssayとLong Assayを1 plateで行う場合>
保存
-20℃
本製品以外に必要な器具、機器(主なもの)
- 【 器具 】
-
- マイクロピペット
- マイクロピペット用チップ(疎水性フィルター付き)
- リアルタイムPCR用のチューブ等
- 【 機器 】
-
- FAMを検出可能なリアルタイムPCR装置(以下の装置で使用可能なことを確認済み)
- Thermal Cycler Dice Real Time System IV(製品コード TP1000/TP1010/TP1030)
- Thermal Cycler Dice Real Time System III(製品コード TP950/TP970/TP980/TP990)
- CronoSTAR 96 Real-Time PCR System(製品コード 640231/640232)
- CFX96 Touch Deep Well Real-Time PCR Detection System(Bio-Rad社)
- LightCycler 96 System/LightCycler 480 System II(Roche Diagnostics社)
- QuantStudio 5 Real-Time PCR System(96-well、0.1または0.2 ml block)(Thermo Fisher Scientific社)