製品説明
Guide-it CRISPR/Cas9 Gesicle Production Systemは、ゲノム編集を目的としてCas9タンパク質/sgRNA複合体を哺乳類細胞に導入するためのエキソソーム様小胞(Gesicle)、Cas9/sgRNA Gesicleを産生するシステムである。Cas9/sgRNA Gesicleの利用により、プラスミドやウイルスベクターを用いたゲノム編集と比べて、幅広い細胞種に高効率にCas9タンパク質/sgRNA複合体を導入することが可能である。
CRISPR/Cas9 Gesicleシステムでは、標的配列に対するsgRNAを発現するプラスミドベクターをGesicle産生用細胞Gesicle Producer 293T Cell Line(製品コード 632617)にトランスフェクションすることにより、Cas9/sgRNA Gesicleを産生する。Cas9/sgRNA Gesicleの産生に必要な試薬は、2本のチューブに凍結乾燥状態で提供される。キット付属のpGuide-it sgRNA1 Vectorを使用して構築したsgRNA発現ベクターを、これらチューブに添加し、混合液をGesicle Producer 293T Cell Lineにトランスフェクションすることにより、簡便に目的のCas9/sgRNA Gesicleを取得することができる。得られたCas9/sgRNA Gesicleは、直接、目的の培養細胞のゲノム編集のために使用可能である。
CRISPR/Cas9 Gesicleの利点
- さまざまな細胞に適応
増殖細胞、非増殖細胞、初代細胞、株化細胞、iPS細胞などさまざまな細胞を対象としたゲノム編集が可能(図2、図3)
- 高活性Cas9タンパク質/sgRNAを確実、効率的に細胞導入
Cas9タンパク質/sgRNAを直接導入するため、遺伝子転写や翻訳の時間は必要なく、導入直後からゲノム編集のプロセスが開始される
- 必要な時だけゲノム編集が利用可能
プラスミドベクターを用いたゲノム編集と比べ、オフターゲットのリスクを軽減
CRISPR/Cas9 Gesicleの原理
図1.Cas9/sgRNA Gesicleの作製と目的細胞への導入
Guide‐it CRISPR/Cas9 Gesicle Production Systemは、その内部に高濃度のCas9タンパク質/sgRNAを包含したエキソソーム様小胞(Gesicle)を作製する。Gesicleには、Cas9タンパク質、標的配列に対するsgRNA、修飾CherryPicker赤色蛍光タンパク質、グリコプロテインが含まれる。sgRNA配列を挿入したpGuide-it-sgRNA1 vectorをGesicle Packaging Mix1とMix2を用いてGesicle Producer 293T Cell Lineへトランスフェクションすると、Gesicle Producer 293T Cell Lineの細胞膜上にグリコプロテインが生成され、Gesicleの形成が誘導され、培養液中に放出される。その際、iDimerize技術によりCas9タンパク質/sgRNA複合体と赤色蛍光タンパク質CherryPickerがGesicleの中で会合し、Gesicle内に効率良く封入される。培養液から回収されたGesicleを目的の培養細胞に加えると、細胞膜と融合してCas9タンパク質/sgRNA複合体を細胞内に放出する。核移行シグナル(NLS)が付加されたCas9タンパク質/sgRNAは核に輸送され、ゲノムDNA上の標的配列を切断する。またGesicleに含まれるCherryPicker蛍光タンパク質により、Cas9タンパク質/sgRNA複合体の導入をモニターすることができる。
* CherryPicker蛍光タンパク質:赤色蛍光タンパク質mCherryとトランスフェリンレセプター膜アンカードメインの融合タンパク質
図2.Guide-it CRISPR/Cas9 Gesicle Production Systemの実験フローチャート
図3.Cas9/sgRNA Gesicleによるさまざまな細胞でのノックアウト効率
ZsGreen1発現配列をゲノム上に1コピー挿入した様々な細胞株を樹立し、Cas9/sgRNA Gesicleによるゲノム編集(遺伝子ノックアウト)を行った。ZsGreen1を標的として設計されたCas9/sgRNA Gesicle(それぞれ10 μl、20 μl、 30 μl添加)、またはCRISPR/Cas9プラスミドで処理し、フローサイトメトリーによりノックアウト効率を評価した。Cas9/sgRNA Gesicleを用いた場合、プラスミドでは効率の低い細胞に対しても一定のノックアウト効率が得られる。
図4.hiPS細胞におけるCD81のノックアウト
ヒトCD81を標的として設計されたsgRNAを含むCas9/sgRNA Gesicleを作製した。
Cellartis human iPS cell line 18(製品コード Y00305)に、Cas9/sgRNA Gesicleを添加し、
Cellartis DEF-CS Culture System(製品コード Y30010)を用いて6時間または24時間培養した。その後、新たなDEF-CS培地に交換し、更に7日間培養した。培養後のiPS細胞のノックアウト効率を、CD81を認識するFITC標識抗体を用いてフローサイトメトリーにより解析した。
パネルA:Gesicle非添加のCellartis human iPS cell line 18をFITC標識CD81抗体で処理したもの(右) および無処理のもの(左)
パネルB:Gesicle添加(左:6時間後、右:24時間後)のCellartis human iPS cell line 18をFITC標識CD81抗体で処理したもの
内容
Guide-it CRISPR/Cas9 Gesicle Production System(製品コード 632613)
Gesicle Producer 293T Cell Line(製品コード 632617)
保存
Stellar Competent Cells:-80℃
その他:-20℃
Gesicle Producer 293T Cell Line :液体窒素
・到着後、ただちに液体窒素中で保存する。
・液体窒素保存ができない場合は、ただちに細胞を融解し、培養を行う。
製品以外に必要な試薬(主なもの)
・0.45 μm 滅菌済みフィルター(cellulose acetate、またはpolysulfonate)
・20 ml 滅菌済みシリンジ
・50 ml conical tube (Corning Falcon Cat. No. 352017など)
・遠心機、スイングローター(50 ml conical tubeが8,000X gで遠心可能なもの)
(例:遠心機 Beckman J2-HS、スイングローター JS-7.5 swinging bucket rotor)
・Dulbecco’s PBS without calcium chloride and magnesium chloride(細胞培養用)(Sigma Cat. No. D8537など)
・細胞培養用培地
・コラーゲンコートプレート