本製品は、AAVベクター作製に必要な3種の要素である、トランスファープラスミド(pAAV-ZsGreen1)、Rep/Capプラスミド(pRC1 or 2 or 5 or 6 or 8 or 9)、およびアデノウイルスヘルパープラスミド(pHelper)を1つに統合したプラスミドです。
ITR配列間に、CMVプロモーター制御下で発現するZsGreen1遺伝子が配置されており、このプラスミドを用いてAAVを作製することで、ZsGreen1を発現するAAVを効率よく作製可能です。
また、ZsGreen1遺伝子をNot Iで切り出すことができる配列となっており、目的遺伝子をクローニングすることが可能です。クローニングにはIn-Fusion Snap Assembly Master Mix(製品コード 638947、638948、638949、638943、638944)を使用することを強く推奨します。
(ただし、AAV粒子に封入されるDNAサイズには制限があるため、挿入する目的遺伝子のサイズは2.8 kb以内にしてください。)
図1.従来法(Triple Transfection法)とのAAV産生量の比較
接着HEK293T細胞を用いてpAAV-ZsGreen1 One-Vectorと従来法(Triple Transfection法
*)でZsGreen1発現AAVベクターを調製、回収し、それぞれの力価をAAVpro Titration Kit (for Real Time PCR) Ver.2(製品コード 6233)で測定し、その結果、従来法と比較して、pAAV-ZsGreen1 One-Vectorではどの血清型においてもより多くのAAVベクターを産生することが示された(Foldは従来法を1とした時のpAAV-ZsGreen1 One-Vectorのウイルス産生量の比率を示している)。
*AAV pro Helper Free Systemを使用してAAVベクターを調製した。
(製品コード 6673、6230、6650、6651、6680、6690)
①: 従来法(Triple Transfection法) ②: pAAV-ZsGreen1 One-Vector
M: Protein Molecular Weight Marker(Broad)
図2.従来法(Triple Transfection法)とのAAVキャプシドタンパク質発現の比較
pAAV-ZsGreen1 One-Vectorと従来法(Triple Transfection法)でそれぞれZsGreen1発現AAVベクターを調製し、精製したAAVベクターを1×10
9 vg/laneでSDS-PAGEに供じた。
その結果、VP1、VP2、およびVP3は、従来法(Triple Transfection法)と大きな差は認められなかった。
表1.rcAAV(replication-competent AAV)の検出確認
| AAV(vg/well) | Ct |
| pAAV-ZsGreen1 One-Vector | 2×1011 vg | -- |
| 従来法(Triple Transfection法) | 2×1011 vg | -- |
| P.C(wtAAV2) | 2×102 vg | 24.2 |
| 2×101 vg | -- |
| N.C | - | -- |
米国FDAや欧州EMA、日本のPMDAなどの規制当局は、rcAAV
*(replication-competent AAV)の検出と管理を遺伝子治療製品の品質管理の重要項目として位置付けている。pAAV One-Vector plasmidについてrcAAV発生頻度の評価を行った。
pAAV-ZsGreen1 One-Vectorおよび従来法(Triple Transfection法)で作製・精製したAAV2ベクター(2×10
11 vg)とアデノウイルス(MOI=5)をHEK293細胞に共感染させた。その後、感染細胞から抽出液を調製し、その細胞抽出液を再度接着HEK293細胞にアデノウイルスと共感染させた後、AAVpro Titration Kit (for Real Time PCR) Ver.2(製品コード 6233)を用いたqPCRによりAAVの有無を確認した。
pAAV-ZsGreen1 One-Vectorおよび従来法で作製したZsGreen1発現AAVベクターはいずれもCt値は検出されなかった。したがって、両者におけるrcAAV発生リスクに差は認められなかった。
また、P.C(野生型AAV2)を用いて同様の試験を行ったところ、2×10
2 vg/wellが検出限界であることが確認された。
以上の結果より、pAAV-ZsGreen1 One-Vectorで作製したZsGreen1発現AAVベクター(2×10
11 vg/well)において、AAVは検出限界以下であり、rcAAVは2×10
2 vg未満であることが示された。このことから理論上AAVベクター1×10
9 vg中にはrcAAVは存在しない(1以下)ことが示唆された。
*AAV作製時にrepおよびcap遺伝子を除いて目的遺伝子を挿入するが、非相同組換えによって自己複製可能なAAVがごく稀に発生することがある。
図3.遺伝子導入効率の検証(フローサイトメトリー法)
接着HEK293T細胞を用いて、pAAV-ZsGreen1 One-Vectorと従来法(Triple Transfection法)でAAV9-CMV-ZsGreen1ベクターを作製・精製した。得られたZsGreen1発現AAVベクターをHeLa細胞に各MOIで感染させ、3日後にフローサイトメーターで遺伝子導入効率を解析した。その結果、pAAV-ZsGreen1 One-Vectorによる遺伝子導入効率は従来法と比較して同等の結果であった。