センダイウイルス(Sendai virus: SeV)はパラミクソウイルス科に属するウイルスです。一本鎖のマイナス鎖RNAゲノムを有しており、細胞質で複製するため、原理的に染色体に組み込まれることはありません。SeVは細胞膜上のシアル酸を介して感染するため、非分裂細胞を含む幅広い細胞種に感染することができます。感染細胞内でSeVゲノムが自立複製するため、転写産物の高発現が期待できます。ヒトへの病原性の報告はありません。
SeVのRNAゲノムには3’端から順に、RNAゲノムに結合するヌクレオカプシドタンパク質(N)、RNAポリメラーゼの小サブユニットであるリン酸化タンパク質(P)、ウイルス粒子の膜構造を維持するマトリックスタンパク質(M)、細胞への侵入に関わる膜融合タンパク質(F)、細胞との結合に重要なヘマグルチニン-ノイラミニダーゼタンパク質(HN)、RNAポリメラーゼの大サブユニットであるラージタンパク質(L)がコードされています(図1)。さらにP遺伝子にはPタンパク質とは読み枠が異なるCタンパク質やVタンパク質がコードされています。一般的に伝播性に関与するF遺伝子をゲノムから欠失させ、F遺伝子を発現する産生細胞を用いることで二次感染しない非伝播性のSeVベクターが得られます。
SeV Packaging System(Starter Pack 1/2)は、上記の特徴を利用したSeVベクターによる遺伝子導入システムで、Vero-F、SeV Packaging Mix、pSeV Vector、およびpSeV(MHN)mEmerald Vector
*で構成されています。
また、リアルタイムPCRを用いたSeVゲノム測定用のプローブSeV Primer/Probe Mix with Standard(製品コード QS-0100-200)や、SeVの力価測定用抗体Anti-Sendai virus Rabbit pAb IgG(製品コード A-0100)もラインナップしています。
*Starter Pack 2のみに含まれます。
図1.センダイウイルス粒子、ゲノムの構造
A:センダイウイルス粒子の構造
B:センダイウイルスゲノムの構造
SeVベクターの調製に必要な以下の試薬が含まれます。
コンポーネント構成が異なる2種類をご用意しておりますので、用途に合わせてお選びください。
- Vero-F
SeVの産生に最適化されたVero細胞由来のF発現細胞株。SeVの感染に必要なFタンパク質を供給する。
- SeV Packaging Mix
SeVのパッケージングに必要なコンポーネントの混合液。
各コンポーネントの発現が最適化されており、高力価のSeVベクターを調製可能。
- pSeV Vector
F遺伝子欠失型のSeVベクタープラスミドで、目的遺伝子を挿入する。
プラスミドには、T7プロモーター、ハンマーヘッド(Hh)リボザイム、F遺伝子欠失型SeVゲノム、HDVリボザイムの順で配置。
- pSeV(MHN)mEmerald Vector ※Starter Pack 2のみに含まれています。
mEmerald(緑色蛍光タンパク質)を搭載したpSeVベクタープラスミド。力価測定や感染効率の評価に使用可能。
●製品構成
- SeV Packaging System(Starter Pack 1)(製品コード S-0010)
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- SeV Packaging System(Starter Pack 2)(製品コード S-0011)
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※Starter Packの各コンポーネントは単品でも購入可能です。SeV Packaging Mixのみ単品販売の容量が異なります。
(単品販売)SeV Packaging Mix(製品コード M-0001-10) 12 well plate サイズで1 well×10回分
図2.SeV Packaging MixとF発現Vero細胞を用いたSeVベクターの産生と感染
発現させたい遺伝子を搭載したpSeVベクタープラスミドとPackaging MixをF発現細胞(Vero-F)に遺伝子導入することで、Packaging MixよりT7ポリメラーゼ、パッケージング促進因子PEF、SeV由来のN、P、L が一過性に発現されます。そしてpSeVベクタープラスミドから転写されたSeVゲノムはN、P、LとRNP複合体を形成し、自己複製と転写が開始され、最終的にウイルス粒子を得ることができます。
図3.SeVベクターの感染例
Lenti、AdVおよびAAVのプロモーター:CBhプロモーター
SeV、Lenti、AdV、AAVはEmGFP、mRNAはEGFP
ウイルス感染および遺伝子導入から3日後の評価において、SeVは他のベクターに比べて高い遺伝子発現量を示した。
●クローニングにおける3つのポイント
Point 1:センダイウイルスを含むパラミクソウイルスのゲノムはゲノム塩基の総数が6の倍数でなければ複製することができません。このパラミクソウイルスの性質はrule of 6と呼ばれています。塩基長の調整は本来の終止コドンの後ろに終止コドンを加えるなど任意の塩基を追加することで調整可能です。
Point 2:センダイウイルスの転写にはRNA依存性RNAポリメラーゼが用いられ、EIS配列という独自の制御配列が必要です(EIS:転写終止配列(9塩基)、介在配列(3塩基)、転写開始配列(10塩基))。搭載遺伝子の下流に22塩基からなるEIS配列(TAAGAAAAACTTAGGGTGAAAG)を必ず付加してください。
Point 3:pSeVベクタープラスミドへのクローニング位置はN遺伝子の上流の+(プラス)位やP遺伝子とM遺伝子の間のPM位、HN遺伝子とL遺伝子の間のHNL位と下流に搭載するに従って発現量が低下します。+位に搭載することで最も発現量が向上しますが、P遺伝子の前に長い遺伝子を配置するとセンダイウイルスの複製に影響を与えます。2,000塩基以上を搭載する場合はPM位に搭載してください。遺伝子発現を抑えたい場合はHNL位に搭載してください。
図4.pSeVのベクターマップおよびクローニングサイト
Hh-Rbzの直後からHDV-Rbzの直前までが6の倍数になるように調製を行う。
詳細は取扱説明書をご確認ください。
●その他必要な試薬など
- Vero細胞 ※力価測定に用いる細胞は Vero-F細胞ではなくVero細胞です。
ーVero細胞(JCRB細胞バンク、JCRB0111)
- トランスフェクション試薬
ーTransIT-2020 Transfection Reagent(製品コード MIR5400)
ーTransIT-Lenti Transfection Reagent(製品コード MIR6604)
ーViaFect Transfection Reagent(プロメガ:Cat. No.E4981)
- FBS
- E-MEM
- MEM非必須アミノ酸溶液(×100)
- ITS-X サプリメント(×100)
- 0.25%トリプシンEDTA溶液
- Opti-MEM(サーモフィッシャーサイエンティフィック:Cat. No.31985062)
- トリプシン(2.5 g/L)
- トリプシン阻害剤:合成トリプシン中和溶液(細胞科学研究所:Cat. No.1220)
- D-PBS(-)
- 7.5% BSA溶液
- 細胞培養プレート(12 well)
- 付着性細胞用フラスコ25 cm2、ベントキャップ
- 滅菌チューブ、ウイルス液凍結保存用バイアル
- 細胞培養に必要な一般的設備
●保存
- Vero-F:液体窒素タンクの気相に保管*
- SeV Packaging Mix:-20℃保存で6ヵ月以内に使用
- pSeV(MHN)mEmerald Vector:-20℃保存で6ヵ月以内に使用
- pSeV Vector:-20℃保存で6ヵ月以内に使用
保存期間は手元に届いてからの期間です。
*Vero-F細胞は到着後に速やかに培養を開始してください。直ぐに培養を開始しない場合は、液体窒素タンクの気相に保管してください。-80℃での保管は細胞の生存率に悪影響を及ぼす可能性があります。
●使用上の注意
本製品をご利用の際は、以下の点にご注意ください。
- 本製品の使用には文部科学省の定める省令(「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令」平成16年文部科学省・環境省令第1号)にあるP2レベル以上の施設が必要です*。
- 本製品を使用する際は、法令および所属機関内の組換えDNA実験の安全委員会の指示に従い、安全に十分注意してください。
- 必ず安全キャビネットを使用してください。
- エアロゾルの発生を最小限にとどめるように心がけて操作を行ってください。
- 本製品の使用によって生じたいかなる事故、損害についても、弊社では責任を負いかねます。
- 本製品は研究用試薬です。臨床目的、体外診断目的に使用することはできません。
- 商用利用を希望する場合は個別にライセンス契約が必要です。
*センダイウイルスの実験分類はクラス2です。本製品を使用する際は「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」、関連法令、および所属機関内の安全委員会の指示に従ってください。組換えウイルスの保管、運搬についても法令を順守してください。研究開発二種省令の詳細は文部科学省研究振興局ライフサイエンス課のホームページを確認してください。
本製品は、センダイウイルス(Sedai virus strain Z)を抗原としたウサギのポリクローナル抗体です。免疫蛍光染色(IF)やELISAに使用可能です。
●保存
-20℃または-80℃で保存し、凍結融解の繰り返しを避けてください。
受け取り後12ヵ月以内に使用してください。
●用途
●使用上の注意
- 本製品は研究用試薬です。臨床目的、体外診断目的に使用することはできません。
- 株式会社レプリテックによる事前の承認なしに、本製品を再販売、再販目的のでの改変、商業製品の製造に使用することはできません。