製品説明
PrimeCap T7 RNA Polymeraseは、Capアナログ依存的RNA合成、低dsRNA(double-strand RNA)生成、および耐熱性(~52℃)の特長を併せ持つ、T7 RNA polymerase
*1の改変体です。本酵素とCleanCap Reagent AG(TriLink社)などのCapアナログを組み合わせて
in vitro transcription(IVT)を行うことで、免疫原性のあるdsRNAの生成を大幅に低減しつつ、高いキャッピング効率とmRNAの高収量を実現します。高品質なmRNAを大量に調製することが可能なため、本製品はワクチンなどのRNA医薬分野での研究開発に適しています。
*1 T7 promoter配列を含む二本鎖DNAを鋳型、NTPを基質として、プロモーター下流の領域を転写し、
in vitroで一本鎖RNAを合成する酵素
代表的なT7 promoter配列と転写開始点(CleanCap Reagent AGを使用する場合の注意点)
IVT反応の鋳型DNAを調製する際の代表的なT7 promoter配列を下記に示します。合成するRNA配列や5ʹ-cap修飾に使用するCapアナログの特徴に応じて鋳型をデザインする必要がありますので、目的に合わせて鋳型DNAをご準備ください。
【CleanCap Reagent AGを利用する場合】
転写開始点(+1 position)からのNGG配列は、AGGとする必要があります。
【Capアナログを使用しない場合】
転写開始点(+1position)からのNGG配列は、AGGまたはGGGとします。
【ARCAを利用する場合】
転写開始点(+1position)からのNGG配列は、GGGとする必要があります。
図1.FLuc mRNA(約1.9 kb)を合成した際の収量(左図)、dsRNAの生成抑制効果(中央図)およびdsRNA含有量(右図)
Positive Control Template (FLuc)(Takara IVTpro T7 mRNA Synthesis Kit(製品コード 6144)の構成品)を鋳型として、T7 RNA Polymerase ver.2.0(製品コード 2541A)と本製品を用いて、CleanCap Reagent AG使用時の標準的な20 μl反応系(
※使用例を参照)37℃でのIVT反応結果を比較したところ、mRNA合成収量を損なうことなく、dsRNAの生成を10%以下に抑えられることを確認した。
図2. Capアナログ濃度の違いによるmRNA収量(左上図)、キャッピング効率(右上図)およびタンパク質発現レベル(左下図)の比較
Positive Control Template (FLuc)を鋳型として、本製品またはT7 RNA Polymerase ver.2.0(製品コード 2541A)と異なる濃度のCleanCap Reagent AG(TriLink社)(0、2、4、6、8 mM)を使用したIVT反応によりFLuc mRNA(約1.9 kb)を合成し、収量を測定した。また、合成されたmRNAのキャッピング効率をLC/MSで測定した。さらに、合成されたFLuc mRNAをHEK293細胞にトランスフェクションし、細胞内でのタンパク質発現レベルをFLucアッセイにより評価した。
その結果、本製品はCleanCap Reagent AGの濃度依存的にmRNAの収量が増加し(左上図)、低濃度のCleanCap Reagent AGの使用でも高いキャッピング効率が確認できた(右上図)。また、どのCleanCap Reagent AG濃度においても、本製品で合成されたmRNAはタンパク質発現レベルが高いことが確認された(左下図)。
用途
- Capアナログを使用したcapped mRNAの合成(共転写キャッピング)
- 酵素的キャッピングに使用するuncapped RNAの合成(注:RNA収量はCapアナログ使用時と比べ、10~40%減少します。)
内容
保存
-20℃
濃度
200 U/μl
起源
Escherichia coli carrying a plasmid containing the gene for phage T7 RNA polymerase variant
一般的性質
質量:約99.8 kDa
補因子:Mg2+
活性の定義
37℃において1時間に1 nmolの[3H]GMPを酸不溶性沈殿物に取り込む酵素量を1 Uとする。
活性測定用反応液組成
40 mM | Tris-HCl(pH8.0) |
8 mM | MgCl2 |
2 mM | スペルミジン |
5 mM | DTT |
0.4 mM | ATP・UTP・CTP |
0.4 mM | [3H]GTP |
1 μg/50 μl | pT7-2 DNA |
品質管理データ
注意事項
- 本酵素の激しい攪拌は行わないでください。
- 鋳型となる二本鎖DNAや試薬、反応に使用するチューブ、マイクロピペット用チップなどにRNaseが混入した場合、反応後に得られるRNAの収量が低下したり、RNAが断片化します。反応に使用するチューブ、マイクロピペット用チップは専用のものとし、反応を行うときはディスポーザブル手袋を着用して、RNaseが混入しないように注意してください。
- 均一な長さのRNAを合成するために、T7 promoterを含む線状化したプラスミドあるいはPCR産物などが鋳型DNAとして使用できます。線状化鋳型の3’末端は5’突出あるいは平滑末端が望ましいとされています。必要に応じてBspQ I(製品コード 1227A/B)などの制限酵素をご利用ください。
- 10×T7 RNA Polymerase Buffer中にはスペルミジンが含まれています。スペルミジンは核酸と複合体を形成して、場合によっては不溶物質として沈殿する可能性がありますので、鋳型DNAは必ず酵素以外のコンポーネントの最後に加えるようにしてください。
- 本製品にはCapアナログやNTPs(ATP、CTP、GTP、UTP)は含まれていません。必要に応じてCleanCap Reagent AG(TriLink社)やRibonucleoside 5’-Triphosphatesなどを別途ご用意ください。
- IVTでのRNA合成反応を促進するPyrophosphatase (inorganic)(製品コード 2450A/B)や、反応中の分解を抑制するRecombinant RNase Inhibitor ver.2.0(製品コード 2315A/B)の併用を推奨します。詳細は各製品ページをご確認ください。
使用例
37℃で1~2時間インキュベーションする。
*1 N
1-Methyl-Pseudo-UTPなどの修飾NTPを使用する場合は、対応するNTPを等量で置き換えてください。
*2 CleanCap Reagent AG(TriLink社:Code. N-7113-1/5/10)