製品説明
PrimeCap T7 RNA Polymerase (low dsRNA), HQ(以下、PrimeCap T7 HQ)は、ヒトまたは動物由来原料、およびβラクタム系化合物を最終組成液に含まないHigh Quality(HQ)グレード製品(研究用)です。本製品は非臨床試験用の医薬品原薬の調製やGMPガイドラインに準拠する医薬品の製造プロセスの開発、また、RNA医薬開発等の基礎研究に利用可能な製品です。
品質グレードとは?(RUO/HQ/GMP)
本製品は、
PrimeCap T7 RNA Polymerase (low dsRNA)(製品コード 2560A)と同等の性能を有しており、Capアナログ依存的RNA合成、低dsRNA(double-strand RNA)生成、および耐熱性(~52℃)の特長を併せ持つ、T7 RNA polymerase
*1の改変体です。
本酵素とCleanCap Reagent AG(TriLink社)などのCapアナログを組み合わせて
in vitro transcription (IVT)を行なうことで、免疫原性のあるdsRNAの生成を大幅に低減しつつ、高いキャッピング効率とmRNAの高収量を実現します。高品質なmRNAを大量に調製することが可能なため、本製品はワクチンなどのRNA医薬分野での研究開発に適しています。
*1 T7 promoter配列を含む二本鎖DNAを鋳型、NTPを基質として、プロモーター下流の領域を転写し、
in vitroで一本鎖RNAを合成する酵素
代表的なT7 promoter配列と転写開始点(CleanCap Reagent AGを使用する場合の注意点)
IVT反応の鋳型DNAを調製する際の代表的なT7 promoter配列を下記に示します。合成するRNA配列や5ʹ-cap修飾に使用するCapアナログの特徴に応じて鋳型をデザインする必要がありますので、目的に合わせて鋳型DNAをご準備ください。
【CleanCap Reagent AGを利用する場合】
転写開始点(+1 position)からのNGG配列は、AGGとする必要があります。
【Capアナログを使用しない場合】
転写開始点(+1position)からのNGG配列は、AGGまたはGGGとします。
【ARCAを利用する場合】
転写開始点(+1position)からのNGG配列は、GGGとする必要があります。
実施例1.FLuc mRNA(約1.9 kb)での合成収量(左図)および dsRNA生成の抑制効果
Positive Control Template (FLuc)
*1を鋳型として、T7 RNA Polymerase ver.2.0(製品コード 2541A)と本製品を用いて、CleanCap Reagent AG使用時の標準的な20 μl反応系(使用例参照)にて、37℃でのIVT反応結果を比較したところ、mRNA合成収量を損なうことなく、dsRNAの生成を10%以下に抑えられることを確認した。
*1 Takara IVTpro T7 mRNA Synthesis Kit(製品コード 6144)の構成品
実施例2.
Capアナログ濃度の違いによるmRNA収量・キャッピング効率・タンパク質発現レベルもご覧ください。
用途
<医薬品原料開発>
非臨床試験用mRNA原薬の調製
RNA医薬のプロセス開発
<基礎研究>
- Capアナログを使用したcapped mRNAの合成(共転写キャッピング)
- 酵素的キャッピングに使用するuncapped RNAの合成(注:RNA収量はCapアナログ使用時と比べ、5~30%減少する場合がある。)
品質
本製品の最終組成液には、ヒトまたは動物由来成分、およびβラクタム系化合物は含まれません。
内容
PrimeCap T7 RNA Polymerase, HQ (200 U/μl) 200,000 U
10× IVT Reaction Buffer, HQ 10 ml
保存
-20℃
濃度
200 U/μl
起源
Escherichia coli carrying a plasmid containing the gene for phage T7 RNA polymerase variant
一般的性質
質量: 約99.8 kDa
補因子: Mg2+
活性の定義
37℃において1時間に0.25 μgの1.9 kb FLuc RNAを生成する酵素量を1 Uとする。
活性測定用反応液組成
1× |
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IVT Reaction Buffer, HQ |
10 mM |
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ATP・CTP・GTP・UTP |
0.9 μg/20 μl |
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リニア化FLucプラスミドDNA |
品質管理データ
注意事項
- 本酵素の激しい攪拌は行わないでください。
- 鋳型となる二本鎖DNAや試薬、反応に使用するチューブ、マイクロピペット用チップなどにRNaseが混入した場合、反応後に得られるRNAの収量が低下したり、RNAが断片化します。反応に使用するチューブ、マイクロピペット用チップは専用のものとし、反応を行うときはディスポーザブル手袋を着用して、RNaseが混入しないように注意してください。
- 均一な長さのRNAを合成するために、T7 promoterを含む線状化したプラスミドあるいはPCR産物などが鋳型DNAとして使用できます。線状化鋳型の3’末端は5’突出あるいは平滑末端が望ましいとされています。必要に応じてBspQ Iなどの制限酵素をご利用ください。
- 10× IVT Reaction Buffer, HQにはスペルミジンが含まれています。スペルミジンは核酸と複合体を形成して、場合によっては不溶物質として沈殿する可能性がありますので、鋳型DNAは必ず酵素以外のコンポーネントの最後に加えるようにしてください。
- 本製品にはCapアナログやNTPs(ATP、CTP、GTP、UTP)は含まれていません。必要に応じてCleanCap Reagent AG(TriLink社)やRibonucleoside 5’-Triphosphatesなどを別途ご用意ください。
- IVTでのRNA合成反応を促進するPyrophosphatase (inorganic), HQ(製品コード 2451A)や、反応中の分解を抑制するRecombinant RNase Inhibitor ver.2.0(製品コード 2315A/B)の併用を推奨します。詳細は各製品ページをご確認ください。
使用例
37℃で1~2時間インキュベーションする。
*1 修飾NTPを使用する場合は、対応するNTPを等量で置き換えてください。
*2 CleanCap Reagent AG(TriLink社:Code. N-7113-1/5/10)