LVpro Packaging Mixは、レンチウイルスベクター調製に必要なコンポーネントを発現するプラスミドを最適な比率で混合し、パッケージングに必要なコンポーネントを最適な比率で発現するよう設計することで、高力価のレンチウイルスベクターを得ることを可能にした製品です。また、5’LTRのU3領域をCMVプロモーターに置き換えたtat非依存性の第3世代レンチウイルスベクターであるpLVproレンチウイルスベクタープラスミドと組み合わせて用いることで、HIV-1由来tatの発現なしにレンチウイルスベクターの作製が可能となっています。導入したいpLVproレンチウイルスベクタープラスミドとLVpro Packaging Mix をLenti-X 293T細胞にコトランスフェクトすることで、LVpro Packaging MixよりHIV-1由来のGag、Pol、Revのレンチウイルスタンパク質と、VSV-G エンベロープタンパク質が一過性に発現されます。そして、pLVproレンチウイルスベクタープラスミドから転写された組換えウイルスRNAは完全なウイルス粒子の中に取り込まれます(図1)。この最適化されたLVpro Packaging MixとLenti-X 293T細胞、さらに高効率トランスフェクション試薬
TransIT-VirusGEN Transfection Reagent(製品コード MIR6700)もしくは
TransIT-293 Transfection Reagent(製品コード MIR2700)の組み合わせにより、高いウイルス力価を有するレンチウイルスベクター液を取得することができ、多くの場合、取得したレンチウイルスベクター液を濃縮することなく、直接、標的細胞の感染に使用できます。
※LVpro Packaging MixとpLVSINレンチウイルスベクタープラスミド(製品コード 6181~6186)との組み合わせでは、レンチウイルスは取得できません。
図1.LVpro Packaging MixとLenti-X 293T細胞を用いたレンチウイルスの産生
LVpro Packaging Mixと目的遺伝子を挿入したpLVproレンチウイルスベクタープラスミドをコトランスフェクトする(ステップ1)と、対応する組換えレンチウイルスゲノムRNA転写物とウイルスパッケージングタンパク質が産生されます(ステップ2)。組換えウイルスRNAゲノム上のパッケージング配列(Ψ)がパッケージングタンパク質に認識されると(ステップ3)、組換えウイルスRNAゲノムがパッケージングタンパク質に取り込まれてウイルスコアが形成され、コアが細胞膜に輸送されます(ステップ4)。その場所で、コアはVSV-Gエンベロープタンパク質を含む細胞膜によって包まれます。成熟した感染性のビリオン(ウイルス粒子)が細胞から出芽し(ステップ5)、培地中に放出されます。培地からウイルス粒子を回収します(ステップ6)。
回収したウイルス粒子は感染力がありますが、標的細胞内での複製・増殖に必要ないくつかの遺伝子を欠いています。ウイルスタンパク質を発現するのに必要なプラスミドを複数用いているため、頻度の低い組換えが何度も起こらないと、複製能をもつウイルスは生成しません。その意味で、この方法は非常に安全なウイルス生産法といえます。
図2. Puromycin耐性遺伝子搭載による目的遺伝子の発現
通常、Puromycinなどの薬剤耐性遺伝子をレンチウイルスベクターに挿入することで、目的遺伝子発現の低下が見られる場合があります。pLVpro-EF1α-ZsGreen1-Pur VectorおよびpLVpro-EF1α-ZsGreen1 VectorとLVpro Packaging Mixをコトランスフェクトしてレンチウイルスを取得しました。得られたZsGreen1発現レンチウイルスベクターを各種の細胞に遺伝子導入し、フローサイトメーターを用いてZsGreen1陽性細胞の発現強度を測定しました。Puromycin耐性遺伝子を搭載したpLVpro-EF1α-ZsGreen1-Pur Vectorにおいても、Puromycin遺伝子を搭載していないpLVpro-EF1α-ZsGreen1 Vectorの約80%のZsGreen1発現が見られました。