製品説明
アデノ随伴ウイルス(Adeno Associated Virus:AAV)は、アデノウイルスやヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスの存在下で増殖する非エンベロープウイルスです。アデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)は文部科学省の定める省令(「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令」平成16年文部科学省・環境省令第1号)にあるP1レベルの施設で取扱いが可能であり、アデノウイルスベクターやレトロウイルスベクターと比較して、安全で取扱いの容易なウイルスベクターとして知られています。AAVベクターは増殖/非増殖のいずれの細胞にも遺伝子導入が可能であり、特に非分裂細胞においては長期間の発現が可能です。また、免疫原性が低く、動物個体への遺伝子導入にも適しています。
AAVには100を超える血清型が存在しており、血清型の違いによって宿主域やウイルスの持つ特徴が異なることが知られています。血清型2(AAV2)は古くから広く研究されてきた血清型の1つであり、宿主域が大変広いことが知られています。血清型1(AAV1)、血清型5(AAV5)、血清型6(AAV6)、血清型8(AAV8)、血清型9(AAV9)は、より高い組織指向性を持った血清型です。AAV1は筋肉、肝臓、気道、中枢神経系等、AAV5は中枢神経系、肝臓、網膜等、AAV6は心臓、筋肉、肝臓等、AAV8は肝臓、筋肉、中枢神経系等、AAV9は中枢神経系、心臓、肝臓、筋肉等への遺伝子導入効率が高いと言われています。
遺伝子発現を抑制するひとつの手法としてRNA 干渉作用(RNA interference:RNAi)があります。RNAiは二本鎖RNA を導入することにより、標的遺伝子のmRNAを分解し、発現を抑制する手法で、哺乳類細胞では21~23塩基の短い二本鎖RNA(short interferingRNA:siRNA)によってRNAi効果が得られることが明らかとなっています。RNAi 実験の主な手法としては、合成siRNAを導入する方法と、発現ベクターを用いて細胞内でsiRNAを形成させる方法が挙げられます。合成siRNAではそのRNAi 効果は一過性であるが、発現ベクターを用いることでRNAi効果の持続が期待できます。
AAVpro Helper Free System (AAV-2xU6)は、RNA polymerase III(pol III)系のプロモーターを搭載した各血清型のAAVベクターをヘルパーウイルスを使用せずに安全に作製するためのキットです(AAV Helper Free System)。本製品により作製されるAAVベクターを用いることにより、標的細胞や標的動物個体においてヘアピン型RNAを一過性に発現させることができます。また、動物個体において使用する場合は、精製したAAVベクターの使用を推奨します。
図1. AAVpro Helper Free SystemによるAAVベクター作製
本シリーズでは異なるプラスミドベクター骨格や血液型の異なる6種類のshRNA発現用キットを用意している。AAVpro Helper Free System (AAV-U6-ZsGreen1)シリーズ(製品コード 6670、6658、6659、6660、6685、6695)はshRNA以外にCMVプロモーターから緑色蛍光タンパク質であるZsGreen1が発現するため導入の確認や導入細胞だけでの評価が可能です。AAVpro Helper Free System (AAV-2xU6)シリーズ(製品コード 6671、6661、6662、6663、6684、6694)は、2種類のshRNAを発現させることができ、2種類のターゲットもしくは1種類のターゲットに2か所のsiRNAを設計できる。
図2. ヘアピン型RNA発現ベクター shRNA発現によるノックダウン効果の確認例
図3. shRNA発現ベクターを用いたノックダウン効果の確認
GAPDHに対するshRNAを発現する組換えAAV2ベクター(pAAV-U6-shGAPDH-ZsGreen1)を293T細胞株を用いて作製し、AAVpro Purification Kit Midi(製品コード 6675)により精製を行った。この精製AAVベクターを用いて293T細胞株に遺伝子導入を行い、遺伝子導入3日後の293T細胞のGAPDH発現をqPCRにより定量し、遺伝子導入効率をZsGreen1発現を指標にフローサイトメトリーにより解析を行った結果、MOI依存的な遺伝子導入とGAPDH遺伝子のノックダウンが認められた。
なお、qPCRによるGAPDH定量には、Human Housekeeping Gene Primer Set(製品コード 3790)のプライマー(GAPDHおよび内部標準としてGSUB2)を使用した。
内容
各製品には3種類のプラスミドとAAVベクター産生細胞からのベクター抽出に必要な2種類の試薬が含まれています。
AAVpro Helper Free System (AAV2-2xU6)(製品コード 6661)の場合
- pAAV-2xU6 Vector(1 μg/μl) 20 μl
- pRC2-mi342 Vector(1 μg/μl)*1 20 μl
- pHelper Vector(1 μg/μl) 20 μl
- AAV Extraction Solution A 1.5 ml×3本
- AAV Extraction Solution B 150 μl×3本
*1 その他のAAVpro Helper Free Systemも各血清型に対応したpRC Vectorがセットになっています。
AAVpro Helper Free System (AAV2-U6-ZsGreen1)(製品コード 6658)の場合
- pAAV-U6-ZsGreen1 Vector (1 μg/μl) 20 μl
- pRC2-mi342 Vector (1 μg/μl)*2 20 μl
- pHelper Vector (1 μg/μl) 20 μl
- AAV Extraction Solution A 1.5 ml×3本
- AAV Extraction Solution B 150 μl×3本
*2 その他のAAVpro Helper Free Systemも各血清型に対応したpRC Vectorがセットになっています。
各ベクターのシーケンスデータ
保存
-20℃
ただし、AAV Extraction Solution AおよびAAV Extraction Solution Bは融解後、室温保存
キット以外に必要な主な器具・試薬
大量作成を行う場合
動物個体への遺伝子導入のためにAAVベクターを大量作製する場合は、高容量トランスフェクション用プラスミドセット(AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9)や臨床開発での使用を想定した、カナマイシン耐性遺伝子を有したAAVベクター高容量プラスミドセット(AAV2、AAV6、AAV8、AAV9)の使用をお薦めします。
AAVpro Packaging Plasmid ラインナップは
こちら 使用上の注意
本製品をご利用の際は、以下の点にご注意ください。
- 本製品の使用には文部科学省の定める省令(「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令」平成16年文部科学省・環境省令第1号)にあるP1レベル以上の施設が必要です。
- 本製品ご利用の際は省令および組織内の組換えDNA実験安全委員会の指示に従い、安全には十分ご注意ください。
- 本アデノ随伴ウイルスベクターの系によって生産されるウイルスは挿入断片によっては危険なウイルスを含む恐れがあるため、組換えアデノ随伴ウイルスベクターの生産と取扱いには、適切な処置をとる必要があります。吸入や付着を防ぐため、必ず、安全キャビネットを使用してください。
- 本製品の使用には遺伝子工学と細胞培養に関する基本的な技術が必要です。
関連資料
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